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坂本花織、圧勝で全日本選手権連覇達成。「GPファイナルの失敗があったからこそ、今がある」 (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【ジュニア勢の台頭も刺激に】

 フリーは「落ち着いた気持ちで、いい緊張感のなかだった」と言うが、演技中は終始、こわばった顔つきを見せながら滑っていたのが印象的だった。そのことについて問われた坂本は、苦笑いしながらこんな舞台裏を明かした。

「途中の3連続ジャンプにいく前に『だいぶ険しい顔をしているな』と思っていたんですけども、もうそこから修正がきかなくて......。ジャンプのことで頭がいっぱいになったら、顔がそっちのけになってしまった。険しい顔になっていたのは集中していたからだと思います」

 今回の全日本には、そんな坂本を脅かす多くのジュニア勢が登場した。表彰台の一角に食い込んだ総合3位の島田麻央、4位の中井亜実、そして5位の千葉百音といった逸材たちである。島田と中井はジュニアGPファイナルに出場しており、島田はジュニアGPファイナル女王になるなど、注目の的になっている。坂本は彼女たちからも大いに刺激を受けているようだ。

「自分も10年前はこんな感じだったのかなと。今大会ではジュニアの子たちが下から追い上げてくる恐怖を感じて、焦りがすごかったんです。でも、やっぱり自分も10年前にしてきたことなので、当時、最前線にいた浅田真央ちゃんたちの世代もこういう気持ちで戦ってきたのかと、一緒とは言わないですけど、似たような感じになっているのかなと思います。

 いろいろなプレッシャーがあるなかで、年上の人たちはそれをひっくるめてすばらしい演技をずっとやり続けていた。今、この年齢(22歳)になって初めてその難しさに気づくことができたし、この経験が嬉しいし、これからも大変なことだと思いますけど、この大変さを味わい続けていたいなと感じています。ジュニアが育っているということは日本の未来は明るいなと思います」

 やっと本来のノーミス演技を復活させた坂本は、全日本女王の座を守ったことで、来年3月に埼玉で行なわれる世界選手権への出場が決まった。

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