本田武史が語る「羽生結弦がプロのスケーターになることの意味」とは (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao / Fantasy on Ice 2022

プロ活動でちょっと違う演技が見られる

 さらに今後は、プロ活動をしていくなかで、インストラクター役をやりたいとなって、他の選手を指導する機会も出てくるのではないかと思います。これまで羽生選手が経験してきたことは、これからの選手たちにとってすごく有益なものですし、その経験を伝えてあげることは、現役選手たちにとってすごくリアリティがあるし、何より心に響くと思います。

 羽生選手はまた、「まだ4回転アクセルを挑戦していきたいです」とも言っています。これは、難しいことに挑戦しながら、やりたいことをやっていくというのが彼のこれからのプロスケーターのスタイルになっていくということなのかなと思います。

 アイスショーでは、順位も関係なく、スピンのレベルも関係なく、ジャンプの回転不足も関係なく、思いきり、思うがままに滑ってほしいです。これからはジャッジではなく、会場全体のお客さんに向けた演技に変わるので、またそこはちょっと違うスケートができるのではないかなと思います。

 アイスショーに出る楽しさというのは、ふだんソロで滑っているオリンピアンや現役選手たちを含めて、オープニングやフィナーレでみんな一緒に滑ったり、グループナンバーで共演したりして、個々の演技だけではなくて、グループ演技を作り上げて披露することです。ショー全体を出演スケーター全員で作り上げるという楽しさは、常に競争をしなければならない競技会にはない魅力かなと思います。

 幕が開いた瞬間に、連続公演などの疲れや緊張を一瞬で忘れてしまうというのが、アイスショーの醍醐味だと思っています。僕の経験上でもそう言えるのですが、そうやってスケートを長く滑り続けるというのがすごく大事なことだと感じます。
(つづく)

Profile
本田武史(ほんだ・たけし)
1981年3月23日、福島県生まれ。現役時代は全日本選手権優勝6回。長野五輪、ソルトレークシティー五輪出場。2002年、03年世界選手権3位。現在はアイスショーで華麗な演技を披露するかたわら、コーチ、解説者として活動する。

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