宇野昌磨、世界選手権優勝はファンやコーチのために。「自分のためだけにスケートをするのは得意じゃない」
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新しい時代の扉を開けた
宇野昌磨(24歳、トヨタ自動車)は名曲『ボレロ』の旋律に体を揺らし、最後のステップでは楽しい衝動を抑えられないようだった。目は輝き、肌は潤い、エネルギーに満ちていた。笑顔は自然発生的なもので、あふれ出す輝きがあった。
「ステップの時に笑顔になっていたのは、いろんな気持ちが混ざって」
宇野はそう言って、短く息を吐いた。
「演技をしながら、わりと頑張ったんじゃないかって思ったり、少し体力的にきつかったのもあったり、このステップ、たとえ転んでもステファン(・ランビエルコーチ)に満足してもらえるようにって。ひとつ前のグループから、ほとんど全員の選手の演技を見ていたので、(最後のフリップはシングルになったが)自分がどういう演技内容だったら優勝できるのかは考えていて」
宇野はからみ合った感情を、笑顔ひとつに集約させた。競技中、凡庸な選手はそのように笑えない。トップ選手だけが心ゆくまで瞬間を楽しめる。すべてを出しきる、"楽しむ"の境地だ。
その結果、宇野は世界王者として新しい時代の扉を開いた。
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