2022.03.27

宇野昌磨、世界選手権優勝はファンやコーチのために。「自分のためだけにスケートをするのは得意じゃない」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

世界選手権で初優勝を果たした宇野昌磨世界選手権で初優勝を果たした宇野昌磨 この記事に関連する写真を見る

新しい時代の扉を開けた

 宇野昌磨(24歳、トヨタ自動車)は名曲『ボレロ』の旋律に体を揺らし、最後のステップでは楽しい衝動を抑えられないようだった。目は輝き、肌は潤い、エネルギーに満ちていた。笑顔は自然発生的なもので、あふれ出す輝きがあった。

「ステップの時に笑顔になっていたのは、いろんな気持ちが混ざって」

 宇野はそう言って、短く息を吐いた。

「演技をしながら、わりと頑張ったんじゃないかって思ったり、少し体力的にきつかったのもあったり、このステップ、たとえ転んでもステファン(・ランビエルコーチ)に満足してもらえるようにって。ひとつ前のグループから、ほとんど全員の選手の演技を見ていたので、(最後のフリップはシングルになったが)自分がどういう演技内容だったら優勝できるのかは考えていて」

 宇野はからみ合った感情を、笑顔ひとつに集約させた。競技中、凡庸な選手はそのように笑えない。トップ選手だけが心ゆくまで瞬間を楽しめる。すべてを出しきる、"楽しむ"の境地だ。

 その結果、宇野は世界王者として新しい時代の扉を開いた。