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宇野昌磨、世界選手権優勝はファンやコーチのために。「自分のためだけにスケートをするのは得意じゃない」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

 3月24日、フランス・モンペリエ。世界選手権の男子シングル、宇野はショートプログラム(SP)で自己ベストとなる109.63点をたたき出し、首位に立った。すべてのジャンプで高いGOE(出来ばえ点)をたたき出し、『オーボエ・コンチェルト』のプログラムを極めた印象だった。最後のポーズ、喜びを我慢できずに全身ではしゃぎ、右手で拳を作ってぴょんぴょんと跳ねた。

「練習どおりのショートプログラムができました。練習での力を試合で発揮するのは難しいので、今はうれしく思います」

 宇野は実直に語ったあと、こう続けていた。

「(2019年グランプリシリーズ、フランス杯でコーチ不在での苦戦から)3年かな、いろいろ自分のなかでの考え方も変わって。当時は終わりに向かってスケートをしていた印象でしたが、今はこれから何をなせるのか、スケートに期待を込めています。まだまだ成長できるのですが、その過程にある自分を(同じフランスで)見てほしいです」

 その点、まさに「宇野劇場」となった。起伏のある物語が人を惹きつける。同時に、彼自身もたくましくしてきた。

 そして3月26日、冒頭に記したようにフリーで最高のフィナーレが待っていた。

 宇野は冒頭の4回転ループを完璧に降りると、4種類5本の4回転という超難度の構成に挑み、ループだけでなくサルコウ、トーループ、フリップと成功した。トリプルアクセルも飛距離が長いジャンプで美しく決め、スピン、ステップはオールレベル4だった。再び自己ベストとなる202.85点で、フリーも1位。総合は世界歴代3位の312.48点で、堂々の完全制覇となった。

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