樋口新葉は4年前とここが違う。五輪代表の座をたぐり寄せたトリプルアクセルとメンタル
全日本選手権のフリーで2位となり、総合2位となった樋口新葉この記事に関連する写真を見る「やったぁー!」
演技直後、大きなガッツポーズとともに叫んだのは、悲願の北京五輪代表の座を目指して戦ってきた樋口新葉だ。
「本当に緊張ですごい足が震えていて、演技前も演技中も足の力が入らないような感覚の中で滑っていて、ジャンプがちゃんと降りられるか不安のところもあったんですけど、気持ちで乗り切って落ち着いた演技で最後までいけたのでよかったなと思いました」
五輪代表最終選考会を兼ねた全日本選手権女子フリー。23日のショートプログラム(SP)で2位発進の樋口は、五輪代表入りを確実にするためには、逆転優勝か、最低でも総合2位を死守しなければいけなかった。だからこそ気合い十分で臨んだ大一番だった。
競技人生を懸けて作り上げたフリー『ライオンキング』。演技冒頭に跳んだ武器のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)は着氷したもののステップアウト。GOE(出来栄え点)で1.60点の減点がついたが、及第点と言える出来にまとめることができたことは大きかった。その後は、ほぼミスのない演技で観客を魅了。プログラム後半に向かって音楽が盛り上がるなか、樋口は落ち着いた表情を見せながらジャンプを次々と跳び、終盤の見せ場であるステップでは、はち切れんばかりの笑顔で『ライオンキング』の世界観を氷上に映し出した。
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叫び声を発して喜びを爆発させたのは、満足いく演技ができたからだろう。リンクサイドで待っていた、幼少時から指導を受ける岡島功治コーチとがっちりと抱き合って大泣きする姿も見られた。端から見ると、ふたりの普段の師弟関係はどちらかと言えばそっけなく、あまりハグなどのスキンシップを見たことがなかったので、このシーンは印象的だった。その場面を会見で問われた樋口は、少し照れ笑いしながらこう振り返った。
「抱き合ってはいたんですけど、ほぼ何も話していなくて、『よかったね』と言ってもらっただけで、それを聞いているだけだったのですけど、ハグで何かを感じとりました(笑)。岡島先生にとって、私はすごくわがままで、言うことをあまり聞かない生徒だったんですけど、この4年間、諦めずに(そばに)ついてきてもらい、試合でもいつもペースを乱さないようにサポートしてもらって、すごく感謝しています」
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