村元哉中&髙橋大輔が見せた「超進化」。全日本2位も「悔しいけど、成長は誇りにしたい」 (3ページ目)
【ふたりがつむぐ氷上の物語】
しかし本番、髙橋は場数の違いを見せた。5分間練習は表情にやや固さが残っていたが、試合でスタートポジションについた途端、完全に迷いは吹っきれていた。シングル時代、世界トップで戦ってきた賜物か。
夢のなかでふたりが恋にふける『ラ・バヤデール』の世界を、かなだいは氷上に演出した。コンビネーションスピン、ストレートラインリフトで拍手の音が高まって、ワンステップシークエンスからローテショナルリフトと曲のテンポが速くなるにつれ、ふたりは激しく愛を重ねた。バイオリンに合わせ、ツイズルをくるくると鋭く回る。その調和は成長の証だろう。エッジワークは深く、体も極限まで倒し、動きを大きく見せていた。
「アイスダンスでは姿勢だったり、傾斜だったり、それが少しでもずれるとカーブが変わってくるので、そこは気をつけていますね」
シーズン前のインタビュー、髙橋はスケーターとしての進化を口にしていた。
「足を上げた時、つま先の伸ばし方とか、そこも合わせないと。シングル時代より、お互いがきれいに見える位置を磨かないといけない。細かい神経を全身まで張り巡らせていると、ただ滑るだけでも、毎日の積み重ねできれいに映るようになってくるのかもしれません」
旋律に乗ってコレオを情熱的に決めたあと、かなだいは顔をほころばせて抱き合った。スタンドのスタンディングオーベーションに、どちらも丁寧に応えた。その姿に一層、拍手が大きくなった。
ふたりは氷の上に物語を作っていた。
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