三原舞依がいるべき場所に戻ってきた。「この瞬間を待っていた」 (2ページ目)
その日を待ち望んだ三原は言う。
「試合が近づくにつれ、エントリーシートとかが配布されて、これから試合があるという嬉しさを感じて。楽しみでしかなかったです。よし、行くぞ!って。それでリンクに入る前、中野(園子)コーチには、『絶対できる、最後まで笑顔で』って言われて。ああ、この瞬間を待っていたんだって思うと嬉しくて」
スケートへの愛が弾けていた。その勢いが、彼女に味方をしたのかもしれない。
三原は、眠りから覚めた妖精のように舞い始める。3回転ルッツ+2回転トーループのコンビネーションジャンプを危なげなく成功。ダブルアクセルもきれいに降りた。3回転ループはわずかに乱れたが、プログラム使用曲「イッツ・マジック」で魔法をかけられたような、その世界に誘う引力を持った演技だった。無観客でなかったら、万雷の拍手が降り注ぎ、会場は温かさに満ちていただろう。
演技後、両腕を高く上げた三原は、素直に喜びを表現していた。リンクサイドで中野コーチに抱き着き、頭を撫でられ、顔をくしゃくしゃにする。子供のような無垢さで、花を咲かせるような笑顔だった。
得点は59.69点で、3位につけた。スコア以上に、記憶に残る復活の瞬間だった。
「この舞台に立たせてもらった感謝の気持ちを、プログラムに込めました」
その言葉は、真摯な三原らしい。
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