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髙橋大輔、最後のフリー演技に挑む。
「ひとりの体感を楽しみたい」

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

全日本選手権のショートプログラムでは14位だった髙橋大輔全日本選手権のショートプログラムでは14位だった髙橋大輔 2020年1月からのアイスダンス転向を表明している髙橋大輔が、全日本選手権でシングル最後のショートプログラム(SP)に出場した。3つのジャンプすべてが回転不足と判定され、最後の3回転ルッツでは転倒して得点は伸びず、65.95点の14位と出遅れた。

 今大会で全日本選手権は14度目の出場だが、過去最低の二桁順位となった。演技直後は、フィニッシュポーズから崩れるように両腕で体を支えて、リンクの上でしばらくうつむいて動かなかった。

「出来としては最悪かなというところです。ジャンプはこちらに来て調子が上がってきたけれど、不安があった。いい練習を積めていない結果がそのまま試合に出た。緊張からか、体が全然動かなかったので、パフォーマンスがうまくできなかったのが悔しいです」

 2005年の初優勝から数えて、全日本タイトルは通算5度も獲得している33歳。2014年のソチ五輪後に現役引退を表明したあとは、ニューヨークに語学とダンスのための留学をしたり、舞台の一員として活動したり、アイスショーに出演したり、試合の解説をしたりと、フィギュアスケートに関わりながらも、さまざまな活動に取り組んできた。

 昨季は4年のブランクを経て現役復帰を果たした。予想以上の滑りを見せて、昨年の全日本選手権は6年ぶりの表彰台となる2位だった。世界選手権代表に選出される権利はあったが、後輩に道を譲って辞退した。

 復帰2シーズン目の今季、アイスダンス転向を9月30日に発表。衝撃を受けたファンは多かったはずだ。その後、ファンは限られたシングル競技の試合をひと目見ようと願ったが、出場を予定していた11月の西日本選手権は、左足首を痛めて欠場。この全日本選手権がシングルスケーターとして最後の大会となり、しかも今季初戦というぶっつけ本番だった。

 SP『ザ・フェニックス』はアップテンポな曲調で、「世界一のステップ」を誇る踊りの名手がどんな演技をするのか、見どころ満載の挑戦的なプログラムだ。だが、ケガの影響による練習不足は否めなかった。あまりに激しい内容のプログラムであるため、通しの練習もほとんどしなかったという。

「このナンバーにして、後悔しています(笑)。アイスショーだと照明が当たったり、燃え上がったり、思い切り発散できるんですけど、試合となると失敗しないようにとか、レベルとかGOE(出来ばえ点)とかいろいろ考えてしまうので、なかなか乗りにくいし、乗り切れない部分があった。でも最後にこういうチャレンジができてよかったなと思います」

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