2019.09.13

少しずつ着実に進化していく。
今季の羽生結弦は極めて柔軟だ

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao

「久しぶりの試合だったので、ちょっと緊張しました」

 オータムクラシックのショートプログラム(SP)前日、9月12日(現地時間)の公式練習を終えた羽生結弦は、そう口を開いた。

オータムクラシックの公式練習に臨む羽生結弦 曲かけが1番目だった羽生は、スピードをあまり出さずに4回トーループと4回転サルコウ、4回転ループに挑んで軽くきれいに着氷すると、昨シーズンと同じフリーの『Origin』を滑った。その後はゆっくりリンクを回り、ジャンプの入り方をじっくりイメージするような姿を見せながら、時々ジャンプを入れる、落ち着いた表情での練習。シーズン初戦へ向けた意気込みを見せるというよりも、あえて気持ちを抑えているような雰囲気で、35分間の練習時間を過ごした。

 練習後には、SPとフリー共に、昨シーズン使った『秋によせて』と『Origin』の2曲を今季も続行すると明らかにし、その理由をこんなふうに説明した。

「去年はケガで思ったようなシーズンを送れなかったのと、ショート、フリーともに自分の中でまだ完璧な演技をできていないことがすごく心残りでした。また、このプログラム自体を、負けたままでは終わらせられない、という気持ちもすごく強かったので……。(エフゲニー・)プルシェンコさんへのリスペクトの気持ちはすごくありますし、完成させたうえで悔いなくこのプログラムを終えたいな、という気持ちがいちばん強かったんです」

 昨シーズン、SPの『秋によせて』では、グランプリ(GP)シリーズ・フィンランド大会と次のロシア大会(ロステレコム杯)で続けてノーミスの演技を見せた。ロステレコム杯では、昨季からの新採点ルールで世界最高の110.53点を獲得している。

「ロステレコム杯の時のショートもいいなとは思っているんですけど、あれでもやっぱり、『まだ完璧じゃないな』とすごく感じています。だから、それを含めてもうちょっと……(いい演技をしたい)。せっかく気持ちが入っているプログラムなので、完成させて、プルシェンコさんと(ジョニー・)ウィアさんにいいものを見せたいという気持ちもありました」