天才ジャンパー・浅田真央を引退に至らしめたトリプルアクセルの封印 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

「復帰してからは、自分が望む演技や結果を出すことができず、悩むことが多くなりました。そして、去年の全日本選手権を終えた後、それまでの自分を支えてきた目標が消え、選手として続ける自分の気力もなくなりました」

 引退を決めた理由を、浅田真央はブログにこう綴っている。やはり「自分の一番の武器」であるトリプルアクセルが跳べなくなったのは大きな痛手だったに違いない。これまでこだわり続けたジャンプであり、調子のバロメーターとも言える技だった。女子では跳べる選手が数えるほどしかいない大技。現役では長らく彼女しか跳ぶ選手はいなかった。

 もし、失敗するリスクが高いトリプルアクセルにこだわり続けるのではなく、例えばかつて挑戦していた3回転フリップ+3回転ループの連続ジャンプを武器にしていたら、果たしてどんな選手になっていたのだろうか......そんな想像もしないわけではなかった。しかし、やはり天才ジャンパーである浅田真央が輝くには、トリプルアクセルはなくてはならないジャンプだったのだろう。

 私が「真央ちゃん」と衝撃の出会いをしたのは、彼女が小学6年で初出場した全日本選手権だった。3回転+3回転+3回転の連続ジャンプを軽々とポンポン跳んでみせて、周囲をあっと言わせたことを、今でも鮮明に覚えている。

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