天才ジャンパー・浅田真央を引退に至らしめたトリプルアクセルの封印

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

「私のフィギュアスケート人生に悔いはありません」

 4月10日午後10時51分、浅田真央が自らのブログを通じて、ついに引退を発表した。今年に入ってから、シーズン後半の競技会に一切出場しないことを発表していた浅田の動向はほとんど伝わってこなかった。平昌五輪シーズンとなる来季に向かうのか、それとも現役引退に向かうのか。この約3カ月間、おそらく彼女は自分自身を見つめて、どちらの道を選択するかを真剣に考えてきたのではないだろうか。

現役最後の舞台となった全日本選手権での浅田真央現役最後の舞台となった全日本選手権での浅田真央 今季はシーズン序盤から苦しい戦いを強いられた。昨季後半に負った左膝の痛みがひかず、なかなか思い通りの練習ができない状態に陥った。とことん練習して滑り込むことで自信をつけ、プログラムを磨いていくタイプだけに、不安は募ったはずだ。それに加えて、故障の影響もあって、彼女の代名詞ともいえるトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)」を封印しなければならなかった。このことがモチベーションの低下を招いたのは明らかだった。

 それでも今季前半戦、浅田は戦い続けた。そして迎えた12月の全日本選手権。満身創痍の中で懸命に「トリプルアクセルを組み込んだ最高のプログラム」ができるまでコンディションを戻して演技したが、結果は自己ワーストの12位と惨敗した。結局、この全日本での滑りが競技者としての最後の演技となったことは、残念であり、寂しいかぎりだ。

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