世界フィギュア、羽生結弦はチェンの台頭にも「追いかけるのが好き」 (3ページ目)

 これは髙橋大輔さんに聞いた話ですが、6分間練習には「独特の雰囲気がある」そうです。「周りが見える時と見えない時があって、調子がいい時は、自分のことだけ考えていても自然と周りが見えるから、自分のペースで(6分間)練習ができるんです」と現役時代を振り返ってくれました。

 調子が悪いと、他の選手とぶつかりそうになったり、跳ぼうとした瞬間に周りが気になってやめたりすることが多いそうですが、集中力が高まると「すべてがうまくいく感覚になる」といいます。

 それは、いわゆる「ゾーン」に入ると表現されるスポーツ選手特有の精神状態に近いものがあるのではないかと思います。羽生選手も、その時は自分自身にしっかりと集中し、それが演技につながったのではないでしょうか。

 予定していたトリプルアクセルを4回転トーループからの連続ジャンプにし、最後の3回転ジャンプもトリプルアクセルに変えるという冷静さ、その対応力はもちろん見事でしたが、真骨頂はジャンプの前後にあったように思います。連続ジャンプの直後にイーグルを入れ、レイバックイナバウアーの後にそのままトリプルアクセルを跳ぶという超高難度な入り方で、しっかりGOE(出来ばえ点)加点がもらえるような演技になっていました。そこには、今シーズン追求してきた4回転の「質」へのこだわりとともに、最後まで絶対に諦めない執念が感じられました。
 
 その執念という点においては、今シーズン、羽生選手は精神面でもさらに強くなった印象があります。それは、ゆっくりとスケートと向き合う時間があったからかもしれません。羽生選手は昨シーズンの世界選手権の後、左足靭帯損傷の治療とリハビリに2カ月をかけています。もちろん、過去にもケガなどで休養することはありましたが、「これだけトレーニングができなかったことは初めて」のことでした。

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