世界ジュニア王者の本田真凜。14歳の才能はどこまで伸びるか (3ページ目)

  • 野口美恵●取材・文 text by Noguchi Yoshie  能登 直●撮影 photo by Noto Sunao

「真凜は試合ギリギリに会場入りして、緊張する間を作らせない。優奈は早めに会場入りさせて、焦らせないことが一番。2人はまったくタイプが違うのだから、試合への持っていき方も別々にしよう」

 そして迎えた本番。本田はギリギリに会場入りする。直前に、優勝候補のポリーナ・ツルスカヤの欠場が発表されたが、動揺する間もなく、すぐに滑走となった。

 曲は、自分も編曲に関わったという自信作、ベートーベン『スプリングソナタ』。軽やかなメロディと本田の可憐な滑りが、自然とマッチする一曲だ。 冒頭の「3回転ループ+3回転トーループ」を降りると、波に乗った。

「1つめのジャンプはちょっと危なかったのですが、濱田先生から最後に『ここまで来たからには、少々のことがあっても思い切り締めればできる』と言われていたのを思い出して、思いっきり締めたら、きれいにジャンプが跳べました」

 ピンクの可愛らしい衣装に身を包んだ、春の舞い。66.11点で自己ベストを更新し、首位と同点での2位発進となった。

 インタビューで「今日の反省点は?」と聞かれると

「反省点ですか? すぐには出ないくらいに今日はよかったです。ジュニアGPファイナルは6人だけだったけれど、今回は世界のうまい選手がみんな集まる大会。日本の試合よりも、海外の試合のほうが『やってやる』と思うので、好きです」

 すでに勝利を確信しているかのような、自信に満ちた笑顔だった。

 そして迎えた翌日。世界ジュニアは“シニアのトップ選手への登竜門”とも言われ、タイトルの重みは格段に違う。しかも前日に優勝候補がケガで棄権していることもあり、誰しもの心に優勝や表彰台への欲が生まれていた。異様な緊張感が漂うロッカールームに、本田はゆっくりと本番ギリギリに到着した。

 最終グループ6人の滑走はこれから、というときだった。ショート首位のアリサ・フェディチキナ(ロシア)が、陸上でのアップ中に、足首を捻って転倒。泣きながら医務室に運ばれていった。

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