「挑戦者が使うべきだったパンチ」とは? 元ヘビー級王者が中谷潤人の目線で語る、井上尚弥戦の勝負を分けたポイント (4ページ目)
【「ふたりとも、楽しそうだった」】
ウィザスプーンは、勝者についても触れた。
「イノウエもまた、"モンスター"と呼ばれ、こちら(アメリカ)で絶賛されるだけのチャンピオンだ。ノニト・ドネアとの第1戦(2019年11月7日)から試合を見てきたが、やっぱりジュント以上の相手はいなかった。最強の挑戦者を十分に研究し、対策を練って迎え撃ったんだ。
リーチがあり、懐の深いジュントに対し、間断なくフェイントをかけ、空振りしながらでも前に出ていった。ファーストラウンドから4回までのポイントは、(※)リングジェネラルシップかな。今回の防衛を祝福したい」
(※)どちらの選手が攻めの姿勢を見せ、主導権を握ろうとしたか、という採点基準のひとつ。
東京ドームを満員にした両者は、拳を交えながら複数回、リング上で微笑み合った。世界ヘビー級王座に2度就いた68歳は、白い歯を見せながら言った。
「ふたりとも、楽しそうだったな。ビッグマッチであんな光景は見たことがないね。俺自身、試合中に笑うような状況には決してならなかった。
しかし、互いに相手を敬い、『やるじゃないか!』と称えるようなシーンだっただろう。ボクシングって美しい、素晴らしい競技だって感じさせてくれる光景だった。極上のファイトを見せてもらって、両選手にお礼を述べるよ」
試合後も笑顔で握手を交わした ©Lemino/SECOND CAREER/NAOKI FUKUDAこの記事に関連する写真を見る
ウィザスプーンは結んだ。
「去年の食事中にも彼に言ったけれど、ジュントにはSky is the limit(可能性は無限)という言葉がピッタリさ。少し休んで、また自分のゴールに向かって走り出してほしい。いつか再会したい。時間が経てば、イノウエ戦の反省も出てくるだろう。もし、俺にできることがあったら、何でもやるよ。そう思わせてくれる男だ。いつも爽やかだもんな」
今回のインタビューでは、ウィザスプーンが中谷を思いやる発言も多く聞かれた。それは、元世界ヘビー級チャンピオンが中谷に魅力を感じ、かつボクサーの敗北の意味を痛いほど理解しているからに他ならない。
パソコンの画面を切る際、ウィザスプーンは右の拳を画面に近づけ、言った。
「ジュントにリフレッシュするよう、伝えてくれ」
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著者プロフィール

林壮一 (はやし・そういち)
1969年生まれ。ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するもケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。ネバダ州立大学リノ校、東京大学大学院情報学環教育部にてジャーナリズムを学ぶ。アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(以上、光文社電子書籍)、『神様のリング』『進め! サムライブルー 世の中への扉』『ほめて伸ばすコーチング』(以上、講談社)などがある。
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