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「挑戦者が使うべきだったパンチ」とは? 元ヘビー級王者が中谷潤人の目線で語る、井上尚弥戦の勝負を分けたポイント (3ページ目)

  • 林壮一●取材・文・撮影 text & photo by Soichi Hayashi Sr.

【中谷の人間としての魅力】

 116-112が2名、残るひとりは115-113の採点で、中谷は33戦目にして初黒星を喫した。

「確かに今回、ジュントは敗れた。とはいえ、プロボクサーには負け方ってものがある。未来への可能性、期待を抱かせる闘いだった。それは東京ドームを埋めた5万5000人をはじめ、配信を目にした世界中のボクシングファンの共通した想いだろう。

 28歳の彼は、まだまだこれから成長するさ。負けを糧にできるファイターだ。もっともっと大きくなる男だと俺は確信する」

ジャッジ3人のスコア表 ジャッジ3人のスコア表 この記事に関連する写真を見る

 そこまで話すと、ウィザスプーンはソファに座り直した。

「ジュントの魅力って、強いボクサーであるだけじゃない。素直さが前面に出た人間性もさ。去年、4泊5日でベンサレムに来てくれた際、俺なりに最大限のアドバイスをしようと考えた。せっかくトップボクサーが俺を訪ねてくれたんだから、当然だよな。

 でも、彼にはちゃんとしたトレーナーがいるってことも、弁(わきま)えて接したつもりだ。ジュントは肩の回し方とか、足の位置、ガードの高さ、俺が指摘したことを一言一句、聞き漏らさないように真剣に聞いてくれた。あの視線は忘れられないよ。ボクシングに向かう姿勢、貪欲さ、純粋さ、こちらのほうこそ多くを教えられた」

 「それに......」と元世界ヘビー級チャンプは記憶を呼び起こした。

「ジュント、リュウト、そしてお前との4人でフィラデルフィア美術館に行った折、駐車場に水溜りがあったことを覚えているか? レンタカーの助手席に座っていた俺が車から出る時、水に足を突っ込まないようにと、ドライバーだったお前に停車位置を少しズラすよう声をかけたよな。日本語での会話だったけれど、ジュントが何を言ったかを俺は理解した。『こんな気配りができる男なんだ』って、うれしく感じた反面、驚いたよ。

べンサレムにて、筆者(右前)も交えた食事べンサレムにて、筆者(右前)も交えた食事この記事に関連する写真を見る

 そういう繊細な部分、周囲に目を配る点は、対戦相手や敵陣営のコーナーを観察することに繋がる。ボクサーは、いい指導者なしで成功しないと俺は思っている。だとしても、リングで闘うのは本人だ。トレーナーの指示通りにやったって、相手に効かないことだってある。結局、最後は自分の判断さ。その時々の状況を把握し、瞬時に次の手を見つけられる選手が生き残っていく。ジュントって、そういうタイプだよな」

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