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【ボクシング】井上尚弥のアフマダリエフ戦に、元ヘビー級王者があえて苦言「あの一発ですべてがひっくり返っていた可能性もある」 (3ページ目)

  • 林壮一●取材・文 text by Soichi Hayashi Sr.

 6回、井上は再三アフマダリエフにボディブローを見舞う。

「いいコンビネーションだった。相手がダメージを受けているから、さらに狙うというのは最適だ。MJは少し諦めたように見えた。あのあたりでイノウエは挑戦者の動きを見切ったな。

 7ラウンドも右ストレートを何発もヒットしたのに、イノウエは倒しにはいかなかった。MJもパンチを当てていたが、踏み込みが浅かった。何とかして流れを変えたかったんだろう。とはいえ、どうしたらイノウエの懐に入れるかがわからなかったね。チャンピオンには、中に入れさせないだけの技術があった。

 MJが14勝していて、11のノックアウトがあるといっても、相手を倒すにはあと半歩は踏み込まなければ。パンチの組み立てを習得できていないようだった。もし彼にもっと鋭さがあって、打撃に幅があったら、イノウエにとって、もっと厳しい試合になっていただろう」

【最終ラウンド、勝利目前にヒヤリ】

 9回、井上は非の打ちどころのない左ボディに加え、右アッパーのカウンターをアフマダリエフのアゴに見舞う。その気になれば仕留められそうだったが、深追いはしなかった。10ラウンドから試合終了までの間も、モンスターはアフマダリエフを足でさばき、118-110、118-110、117-111のスコアで4つのベルトを守った。

「ノックアウトが見たかった、と感じたファンは多いだろう。でも、イノウエはよかった。ベストパフォーマンスではないかもしれないが、挑戦者を完璧にコントロールした点は、讃えられるさ。

 あえて苦言を呈すなら、最後の最後、残り10秒を切ってからMJの右フックをもらったところ。あれは、いただけない。勝利を確信して、少し気が緩んだのか。ちょっとグラッとしたよな。井上にしてみれば、MJは予想を超える選手ではなかった。戦いながら『これなら勝てる』『問題ない』と自信を深めていったはずだ。しかし、MJが本物のパンチャーだったら、あの一発ですべてがひっくり返っていた可能性もある。それがボクシングだ。まぁ、勝ったことが最も重要だけどさ」

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