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【ボクシング】井上尚弥のアフマダリエフ戦に、元ヘビー級王者があえて苦言「あの一発ですべてがひっくり返っていた可能性もある」 (2ページ目)

  • 林壮一●取材・文 text by Soichi Hayashi Sr.

 前評判の高かったアフマダリエフだが、井上のプレッシャーに動きが単調になっていく。

「4ラウンド、イノウエは右ショートのカウンターをヒットした。『おお、やるな!』と思った瞬間に、MJの左ストレートを喰らった。見た目は大したことなさそうだったけれど、確かにもらった。クリーンヒットだ。でも、イノウエの回復は早かった。本当にすぐに立ち直った。ラウンド終了のゴングが鳴ったのは、その少しあとだったな。

 MJは、あそこで攻め切れなかった。いいパンチを入れたら、次に結びつけなければいけない。彼は......うーん、スキルがなぁ。とにかくスキルが足りなかった。強い選手なんだろうがね。もう少し、攻撃のバリエーションやコンビネーションに工夫が見られたらよかったんだが」

【両者の間にあった「引き出し」の差】

ロッキー像の前でポーズをとるティム photo by Soichi Hayashi Sr.ロッキー像の前でポーズをとるティム photo by Soichi Hayashi Sr.この記事に関連する写真を見る

 アフマダリエフは、かなりのハードパンチャーだ――。試合前、ジャパニーズメディアの大半が、そんなふうに論じていた。

「イノウエのスタイルを見るに、MJのパンチを警戒していたのは間違いない。ただ、俺が『ん?』と思ったのは、5ラウンドにイノウエがワンツーのダブルをヒットしたあとに、挑戦者のコンビネーションを喰った点さ。MJは打ち終わりを狙っていた。で、乱打戦に持ち込みたくて『こい!』『打ってこい!!』みたいな動きをしただろう。

 それでもイノウエは、ポイントアウトする策をとった。勝ちに徹したからこそだろう。『相手はパンチがあるから、絶対にもらわないぞ』と考えたのと同時に、前回、そして昨年5月のダウンを教訓としたのかもな。あるいは、サウスポーであるMJを相手にしながら、ジュント・ナカタニを見据えたテーマがひとつかふたつあったのかもしれない。まぁ、ジュントはもっと速いし、パンチもあるし、フットワークだって鋭いからMJとでは比較にならないが。

 5ラウンド、イノウエはスイッチしたり、終盤はロープを背にして誘い、カウンターの右アッパーを放ったりと、多彩な攻撃を披露した。やっぱり引き出しの多さがMJとは違ったな。そして後半になるにつれてリングを支配していった」

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