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K-1復帰戦で「青い目のサムライ」アンディ・フグと闘った佐竹雅昭「あの内容が僕の限界だった」 (2ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji

【フグのかかと落としはどんな技だった?】

 しかし、周囲は一騎打ちを盛り上げた。中でも大会を中継するフジテレビは、1993年にK-1を放送を開始してから4年目にして、初のゴールデンタイムでの中継を決定。格闘技に興味がない視聴者を惹きつけるため、多くのバラエティ番組で活躍し、抜群の知名度を誇っていた佐竹の出場が不可欠だったのだ。

 K-1グランプリを優勝したばかりのフグとの対戦は、ゴールデンタイムに"うってつけ"のマッチメイクだった。佐竹にとっても自身の試合がゴールデンタイムで中継されることは初めてだったが、それも燃える材料にはならなかった。

「ゴールデンタイムだから特別だとは思っていなかったし、『アピールしなきゃ』といった意識もありませんでした。ただただ、『ゴールデンでやるんだ』という感じ。振り返れば、復帰することは決めましたが、自分が求める闘いとK-1がやりたいことの間にズレが生じてきていたんでしょう。

 K-1にいながら、K-1にいない感じというか......。あの頃は、プロ野球やJリーグのように誰からも認められるスポーツ、格闘技にするために、もっとやらなきゃいけないことがあったと思うんですよ。例えば、ランキング制を導入するとか、コミッションを設立するとか。だけど、現実では"ショー"のようになっていった。やってることすべてがビジネスだったから、『いつか限界が来るだろう』と思っていましたし、地に足をつけようとしないスタンスや考え方が苦手でした」

 初のゴールデンタイム進出で盛り上がる周囲とは対照的に、佐竹は冷静だった。

 迎えた試合では、フグが再三、必殺の「かかと落とし」を繰り出した。フグの代名詞とも言えるが、どんな技だったのか。

「かかと落としは直線的で射程距離もわかりますし、効くものじゃないんです。あれでKOされることはないので、そんなに怖さはありませんでした。ただ、派手で見栄えがいい技ですから、プロとして観客を盛り上げ、ムードを自分優位にさせることに効果的であることは事実ですね」

 両者とも決め手を欠いたまま5ラウンドが終了。判定で佐竹は敗れた。

「僕の中では、ブランクもありましたし、よく頑張った試合だったと思います。いろんな複雑な感情がありながらも、あの時にできる精一杯の熱い試合ができたかな、と思っています。逆に、あの内容が僕の限界だったかもしれません」

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