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ムエタイの頂点から吉成名高が描く未来 「ワクワクするものを求め続ける」 (4ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro
  • 安川結子●撮影 photo by Yasukawa Yuko

――その迷いをどう乗り越えたのでしょうか?

「そんな時に、中川会長が『今まで中学、高校とすべてをかけて格闘技に打ち込んできたんだから、それを信じて突き進めばいい』と言ってくださったんです。その言葉ですごく気合が入って、気持ちが吹っ切れました。そこからは、不安を感じることがあっても、『なんとかなるだろう』と前向きに考えるようになりました」

――今では、ムエタイのトップ選手として活躍されているわけですから。

「少しずつ名前も知ってもらえるようになって、生活もできています。これまで楽しいことを我慢してきた部分もありますし、それが報われるような格闘技人生にしたいと思っていますね」

――中川会長の言葉が、大きな支えになったんですね。

「はい。何度か迷いがあった時期もありましたが、そのたびに会長や家族に相談して、支えられながら進んできました」

――吉成選手のファイトスタイルで、完成形のイメージはありますか?

「今のスタイルは、自分のやりたいことがだいぶできるようになってきたという感覚はあります。でも、それを完成形だと思ってしまうと、それ以上の成長が望めなくなるので、常に向上心を持ちながら取り組んでいます。大まかに見れば、格闘技人生も折り返し地点には差し掛かっていると思います。もう10年間(2016年4月3日 プロデビュー)戦ってきて、キャリアの半分くらいは行っているかなと」

――まだ24歳という若さですが、すでに10年間のキャリアを積まれてきました。近い目標はONEでの勝利だと思いますが、その先の長期的なビジョンも考えていますか?

「今は特定のベルトが欲しいというよりも、どこまで強くなれるかを追い求めていきたいという気持ちのほうが強いです。ワクワクすることをやりたいし、今はONE参戦に向けて気持ちが上がっているので、それに向けて練習を頑張ることが生き甲斐になっています。そういったワクワクするものを求め続けていければいいですね」

――ムエタイの魅力、そして吉成選手の強さを世界に伝えるという目標を成し遂げたその先に、別の競技へ挑戦する可能性はありますか?

「先ほど、普段の練習でボクシングのスパーリングをトップレベルの選手とさせてもらっていると話しましたが、同じ格闘技でも、パンチだけに特化したボクシングには、『こんな技術があるのか』、『こんなタイミングや駆け引きがあるのか』と発見があって本当に面白いです。それがワクワクに繋がるので、ボクシングをやる可能性はあると思います」

――ONEでの初戦、観客がワクワクする試合を楽しみにしています!

「はい! 3月23日にONEの舞台ではじめて試合をします。ONEの舞台では、アグレッシブに攻める選手が多いですが、僕は今まで培ってきたムエタイの技術をしっかり見せて、世界を驚かせる試合をしたいと思っています。ぜひ注目してもらえるとうれしいです。そして、今回の試合に勝って、今後の僕の動向にも注目していただけたらと思います。全力で頑張ります!」

【Profile】吉成 名高(よしなり・なだか)
2001年1月8日生まれ、神奈川県横須賀市出身。165㎝・56㎏。エイワスポーツジム所属。幼少期に兄の影響で空手を始め、小学3年時にキックボクシングへ。6年生の頃から本場タイで修業しながらムエタイ選手として実績を積む。2019年、日本人として初めてムエタイ最高峰の舞台である「ラジャダムナン」と「ルンピニー」の統一王者に輝いた。2023年、タイ人以外では初となるラジャダムナンスタジアム3階級制覇という偉業も達成。さらに、タイスポーツ省承認のWMO(世界ムエタイ機構)からはPFP(パウンド・フォー・パウンド)ランキング1位に選ばれ、名実ともにムエタイ界において唯一無二の存在となる。現在、破竹の35連勝中。
3月23日に開催される ONE Championship「ONE 172: 武尊 VS ロッタン」 では、元ルンピニースタジアム王者ラック・エラワンとの一戦が決定。ムエタイの伝統とONE独自のルールが交錯する中、吉成がどのように新たな歴史を刻むのか、世界が注目している。
通算成績は68戦61勝(39KO)6敗1分。

◆ONE 172: 武尊 VS ロッタン
詳細はこちら>>

◆“ムエタイ3階級制覇”日本人王者・吉成名高の初デジタル写真集

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著者プロフィール

  • 篠﨑貴浩

    篠﨑貴浩 (しのざき・たかひろ)

    フリーライター。栃木県出身。大学卒業後、放送作家としてテレビ・ラジオの制作に携わる。『山本"KID"徳郁 HEART HIT RADIO』(ニッポン放送)『FIGHTING RADIO RIZIN!!』(NACK5)ウェブでは格闘技を中心に執筆中。レフェリーライセンス取得。ボクシング世界王者のYouTube制作も。

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