「井上尚弥 vs. ドヘニー」の9.3決戦を在米ベテラン記者3人が展望 ドヘニーが大番狂わせを起こすには? (2ページ目)

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke

2. ドヘニーが大番狂わせを起こすには何をする必要があるのか?

キム : ドヘニーはキャリア最高の出来、井上が最悪の状態でなければならない。ドヘニーは悪い選手ではない。元世界王者であり、依然として『リングマガジン』の階級ランキングではスーパーバンタム級のトップ10に入っている。そんな選手と対戦しても一部から"物足りない"と思われてしまうことは、ある意味で井上の素晴らしさを物語っているのだろう。

ゴンサレス : 37歳のアイリッシュ(アイルランド人)ボクサー、ドヘニーは今回がラストチャンスだと気づいているに違いない。その事実はモチベーションになるはずで、現時点での最高のコンディションで臨んでくるだろう。そのうえで、リング上でよく動き、井上が入ってくるところに左ストレートか、右フックを狙うべき。戦いが長引いたら井上が安定感を誇示する展開になるだけに、序盤が勝負になる。

サラサール : これまで以上に規律正しく戦う必要がある。フェイントを使って罠を仕掛け、カウンター作戦が井上相手にも機能することを願うしかない。ボディ攻めも必須だろう。やはり不利は否めず、リング中央で井上とパンチを交換しようものなら、早いラウンドで決着がついてしまうと思う。

3. 結果予想は?

キム : 中盤以降まで長引くことはないと見る。井上の破壊力は飛び抜けており、サウスポーも苦にしないことは、最近の戦歴が示している。

ゴンサレス : ドヘニーの左手が下がりがちなのにつけ込み、井上が右ストレートか右アッパーを打ち込む展開が想像できる。"モンスター(井上)"が4回に強烈なKO勝ちを飾るだろう。

サラサール : ドヘニーには元世界王者だっただけの底力があり、序盤は悪くない戦いをするのではないかと見ている。ただ、井上が油断するとも思わない。特にモンスターの行く手に、より魅力的な報酬が得られる試合が何戦か待ち受けているのであればなおさらだ。井上はドヘニーを徐々に痛めつけ、6〜8ラウンドにフィニッシュすると予想する。

4. 今戦も井上が勝ち抜くと仮定し、次戦で対戦するには誰か?

キム : IBFの指名挑戦者サム・グッドマン(オーストラリア)との対戦が有力に思える。ただ、個人的にはWBA指名挑戦者のアフマダリエフと戦ってほしい。現在のスーパーバンタム級において、井上がまだ倒していない選手のなかではアフマダリエフが最強の相手であり、フェザー級に昇級する前に対戦してほしいと願う。それをこなせば、もうこの階級でやるべきことは残っていない。

ゴンサレス : グッドマンは次戦で井上に挑戦できると信じているようだが、ここでは井上がアフマダリエフとの指名戦をこなし、そのあとにフェザー級に昇級すると予想しておきたい。もっとも、WBC世界バンタム級王者・中谷潤人(M.T)と東京ドームで激突するスーパーファイトがスーパーバンタム級で実現に向かうのであれば、そのシナリオは変わり得るかもしれない。

サラサール : 故障か顔面のカットなどがない限り、井上は12月にも試合を行なうのだろう。次戦はグッドマン、来春にアフマダリエフと戦うと見る。近い将来、井上が中谷と対戦すれば大注目の一戦になる。もっとも、中谷にとってはバンタム級に止まり、ジェシー・"バム"・ロドリゲス(アメリカ)がスーパーフライ級から上がってくるのを待つという選択肢も魅力的ではあるのだろうから、どうなっていくかはわからない。

プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る