「人を殴る才能がある」武居由樹は、いかにして井上尚弥に「ボコボコにされた」のか? マススパーリングは「憂鬱」で「恐ろしい時間でした」 (4ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

――試合後、リング上のマイクで「足立区から来た武居が東京ドームで世界チャンピオンになりました」と話していました。ここまでを振り返ってみていかがですか?

武居 そうですね、順調......ですかね?

八重樫 周囲から見たら順調に見えても、みんな血ヘドを吐きながらやっていますからね。選手自身は目一杯だったりします。だから、「順調だね」と言われるうちはいいんですが、自分で「順調だ」と思ったらダメ。もっともっと追い込んでいかないと、本当の意味で、順調にならないので。だからこそ、トレーナーである僕や周りがハッパをかけないといけないです。そうしないと、どこかで立ち止まってしまって、キャリアが崩れてしまうことになりますからね」

武居 やっぱり、言うことがどこかの会社の社長っぽいですね(笑)。

――今回、おふたりの信頼関係もよく伝わってきました。

八重樫 そうですか? 普段の会話は嚙み合わない時もありますよ(笑)。

武居 そうかもしれないです(笑)。

【プロフィール】

■武居由樹 (たけい・よしき)

1996年7月12日、東京都足立区生まれ。10歳でキックボクシングを始め、足立東高時代はボクシング部でも活躍。「power of dream」に所属し、2014年11月にKrushでキックボクシングデビュー。17年4月には第2代K-1 WORLD GPスーパーバンタム級王座を獲得。23勝(16KO)2敗の戦績を残し、20年12月、ボクシング転向を発表。元世界3階級王者の「激闘王」八重樫東トレーナーに師事し、21年にプロボクシングデビュー。プロ5戦目で、東洋太平洋スーパーバンタム級王座獲得。バンタム級転向のため、2023年11月にタイトル返上。2024年5月6日、WBO世界バンタム級タイトルマッチにて、王者ジェイソン・マロニーに判定3-0で勝利を収め、世界初挑戦で王座を獲得した。戦績は9戦9勝(8KO)。

■八重樫東(やえがし・あきら)

1983年2月25日、岩手県北上市生まれ。拓殖大学2年時に国体優勝。2005年3月に大橋ジムからプロデビュー。06年東洋太平洋ミニマム級王座獲得。11年にWBA世界ミニマム王座を獲得。13年にはWBC世界フライ級王座を獲得し、3度防衛。15年にIBF世界ライトフライ級王座を獲得、日本人3人目の3階級制覇を達成した。井岡一翔、ローマン・ゴンサレスなどとの激しいファイトスタイルから「激闘王」の異名を持つ。2020年9月に引退を発表。通算戦績は、35戦28勝(16KO)7敗。

プロフィール

  • 篠﨑貴浩

    篠﨑貴浩 (しのざき・たかひろ)

    フリーライター。栃木県出身。大学卒業後、放送作家としてテレビ・ラジオの制作に携わる。『山本"KID"徳郁 HEART HIT RADIO』(ニッポン放送)『FIGHTING RADIO RIZIN!!』(NACK5)ウェブでは格闘技を中心に執筆中。レフェリーライセンス取得。ボクシング世界王者のYouTube制作も。

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