「人を殴る才能がある」武居由樹は、いかにして井上尚弥に「ボコボコにされた」のか? マススパーリングは「憂鬱」で「恐ろしい時間でした」 (2ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

――"人を殴る才能"について、もう少し詳しく聞かせください。

八重樫 たとえば、尚弥は洗練された技術があるので、"パンチを打ち抜く"という表現が適切なんですけど、武居の場合は"ぶん殴る"という表現のほうが合っている。武居の父親(=「POWER OF DREAM」の古川誠一会長)の教えですね。

――育った環境で自然と培われた能力ということでしょうか?

八重樫 そうですね。武居の近くには、幼少の頃からずっと格闘技がありました。練習でも、やらないとやられちゃう。小さい頃からパンチを当てたり、蹴ったりすることをやっていたので、その感覚が身についている。さらに、パンチをもらいたくないから避ける、もしくは避けてからパンチを当てるようにしていった。それらは古川会長が作ったいい環境だと思っています」

【井上尚弥とのマススパーで感じた恐ろしさ】

――武居選手は「緑色のベルト(=WBC)が欲しい」と話していましたが、中谷潤人選手が現在保持しているということではなく、「かねてから」ということですか?

武居 そうですね。ボクシングに転向する前から、あのベルトに憧れがあります。

――バンタム級の主要4団体のベルトは、すべて日本人選手が保持しています。同門でWBAの王者である拓真選手と、普段の練習で手を合わせることはあるのでしょうか?

武居 拓真さんとはないと思います。僕がサウスポーで、拓真さんがオーソドックスなので、今後にお互いの対戦相手のスタイルが似ていたりすれば、やらせてもらえるかもしれませんが。

――試合から一夜明けた会見では、マロニー戦の約1カ月前に武居選手と尚弥選手がマススパーをしていたことを、大橋秀行会長が明かしていましたね。

武居 はい、10ラウンドです。本当にいい勉強になりました。メッタ打ちにされましたね(笑)。マススパーをやることは、その1週間くらい前に聞かされたんですが、すごく不安になりました。

 もともと僕は、誰とやるにしてもスパーの時のほうが緊張します。試合のほうが気はラクというか、いい意味で開き直っているのかもしれません。自分で言うのも変ですが、試合とスパーではまったく動きが違うと思います。K-1時代は、そんなにガチのスパーをやっていなかったんです。マススパーやミットなどで仕上げていました。ボクシングに転向してからスパーをするようになって、「こういう仕上げ方をするのか」と知りました。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る