東京女子プロレスのパワーファイター渡辺未詩が坂崎ユカの涙で気づかされたこと「ユカさんは世代交代を望んでいない...」

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

■『今こそ女子プロレス!』vol.16

渡辺未詩 後編

(前編:情緒不安定状態で組まれた絶対エースとの一戦に「ここで変わらないと、たぶん一生このままだ」>>)

 2018年1月4日の東京女子プロレス後楽園ホール大会で、リングネーム「ミウ」でプロレスデビューした「アップアップガールズ(プロレス)」(以下、アプガプロレス)の渡辺未詩。アイドル志望だった彼女はプロレスに対して前向きになれず、何を目指せばいいのかわからずにいた。しかし6月、山下実優とシングルマッチをしたことで、意識がガラリと変わる。そこから劇的な変化を遂げた。

2022年8月、坂崎ユカ(下)との「東京プリンセスカップ」決勝に臨んだ渡辺未詩 Photo by 東京女子プロレス2022年8月、坂崎ユカ(下)との「東京プリンセスカップ」決勝に臨んだ渡辺未詩 Photo by 東京女子プロレスこの記事に関連する写真を見る

【人の"倍"練習するようになった意外な理由】

 プロレスと本気で向き合うようになり、それまでプロレスを観てこなかったことをコンプレックスに感じるようになった。同じアプガプロレスのメンバー、ヒカリ(現「乃蒼ヒカリ」)はプロレス志望で入ってきている。中学時代からプロレスファンのヒカリには、知識では追いつけない。

 事務所の社長に「とにかくプロレスをたくさん観なさい」と言われたが、プロレスを長く観るのはしんどかった。理由のひとつとして、プロレスラーは肌の露出が多い。アイドルしか見てこなかった渡辺は、そこに抵抗を感じた。

「プロレスラーのコスチュームの布の面積が少ないことに見慣れてないせいもあったと思います。自分が露出するのも嫌でしたから。お腹を出すのも嫌だし、コスチュームも嫌だった。ピンクだったのがせめてもの救いでしたね」

 プロレスの知識もない。プロレスを観るのも抵抗がある。ならば、人より多く練習するしかないと思った。

 東京女子プロレスの選手が増えた時、合同練習の時間を先輩後輩で分けることになった。ダンスレッスンでも"うまい人を見て学ぶ"という認識だった渡辺は、先輩がいなければ上達できないと思い、「見学だけでもさせてほしい」と直訴。見学しているうちに「どうせなら練習してもいいよ」と言われ、1部も2部も練習するようになった。文字通り、人の"倍"の量を練習するようになったのだ。

 8月3日、アプガプロレスは世界最大級のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL2018」(通称「TIF」)に出演。会場で路上プロレスも行なった。アイドルオタクの渡辺には、TIFでプロレスの企画が開催されることのすごさがよくわかった。プロレスはすごいのかもしれない。自分たちにしかできないことをしよう――。プロレスに対するモチベーションが上がった。

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