現役アイドル兼プロレスラーの渡辺未詩 情緒不安定状態で組まれた絶対エースとの一戦に「ここで変わらないと、たぶん一生このままだ」

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

■『今こそ女子プロレス!』vol.16

渡辺未詩 前編

「みんなープロレスのこと好きかーーーーーーーー????? 私は大好きだーーーーーーーー!!」

 渡辺未詩の入場曲『チョコっとラブMEドゥー』。この曲のイメージが強いからか、彼女は根っからのプロレス好きという印象がある。「アップアップガールズ(仮)」の妹分として2017年8月にデビューした「アップアップガールズ(プロレス)」(以下、アプガプロレス)のメンバー。現役アイドルでもある彼女は、アイドルもプロレスも、とにかく楽しんでいる印象なのだ。

現役アイドルでプロレスラーの渡辺未詩 林ユバ●撮影 photo by Hayashi Yuba現役アイドルでプロレスラーの渡辺未詩 林ユバ●撮影 photo by Hayashi Yubaこの記事に関連する写真を見る

 得意技はジャイアントスイング。だれもが知っているこの技を、彼女は徹底的に磨き上げた。ソフトボールで鍛えた強い肩で、相手選手をブンブンと振り回す様は圧巻。2023年2月21日、武藤敬司の引退興行で披露した際には、東京ドームがどよめいた。Xのトレンドには、すぐさま「東京ドーム」「ジャイアントスイング」「アイドル」の文字が並んだ。

 3月31日に開催される東京女子プロレス両国国技館大会で、渡辺は団体最高峰のベルト「プリンセス・オブ・プリンセス王座」に挑戦する。キャリア6年。順風満帆に見えるが、ここに至るまでには葛藤があった。

「プロレスが大嫌いでした。『私、何やってるんだろう?』って、毎日泣いていました」

 挫折と絶望を繰り返した、渡辺未詩の半生とは――。

【アイドルへの憧れと現実】

 渡辺は1999年、埼玉県に長女として生まれた。彼女は「ごく普通の家族」と言うが、厳しく育てられたようだ。外出先で連絡を返さないと「携帯を解約する」と言われ、テレビを見過ぎるとB-CASカードを抜かれた。

 2000年代、モーニング娘。が大流行し、日常的にテレビでアイドルを目にして育った彼女は、物心ついた頃にはアイドルに憧れを抱いていた。小学校高学年になるとAKB48ブームが起こり、憧れは夢へと変わった。将来、自分もキラキラしたアイドルになりたいと思うようになった。

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