「いつまで続けるの? 殴られる姿、もう見てられないよ」ボクシングも格闘技も好きじゃなかった27歳女子がリングに上がったワケ
プロボクサー・藤原茜インタビュー(前編)
プロボクサーの藤原茜。36歳である。彼女はなぜ、"アラフォー"を迎えながらリングに立ち、闘い続けるのか。美しきファイターの"生き様"に迫る――。
プロボクサーの藤原茜。photo by Fujimaki Gohこの記事に関連する写真を見る
腫れ上がった顔でプロテインを飲む彼女を見て、試合を観戦した大学時代の交際相手が聞いた。
「いつまで続けるの? 殴られる姿、もう見てられないよ」
ありきたりのロマンス映画なら、彼女はグローブを壁にかけ、元彼と復縁したかもしれない。
だが、ボトルに残ったプロテインを飲み干すと、彼女はキッパリと言った。
「じゃあ、会場に来ないで。私がやりたくてやっていることに口を出してほしくない」
プロボクサー藤原茜、36歳。闘い続ける理由がある――。
運動は幼い時から得意だった。
最初に始めたのは水泳。兄が通うスイミングスクールは3歳からしか入れなかったが、「入りたい、入りたい!」と駄々をこね続け、特別に3歳の誕生日を待たずに入会を認めてもらった。
小学生時代は陸上、水泳、体操教室とさまざまな競技を経験。同時にピアノや絵画も習う多才さも持ち合わせていた。
中学に入ると、気の合う友だちの多くがバスケ部に入部。しかし彼女はバレー部を選んだ。
「バスケットのように、ひとつのボールを奪い合ったり、取り合ったりするのが苦手で。同じボール競技でもネットがあるバレーならいいかなって」
大学は日本体育大学へ。
「特に『スポーツ大好き!』みたいなことは思ったことがなくて。ただ、幼稚園の頃から足が速かったり、人より運動ができたんで、なんとなくの流れでしたね」
大学では部には所属せず、趣味で社会人のバレーボールチームに参加し、夏はビーチバレーで汗を流したりもしたが、もっぱらスポーツジムのインストラクターのバイトに明け暮れる日々を過ごした。そして、スポーツ・健康事業の企画や運営を請け負うコンサルティング会社に就職。決め手は、家から近いことだった。
「自転車で通える距離だったので(笑)」
1 / 3