「いつまで続けるの? 殴られる姿、もう見てられないよ」ボクシングも格闘技も好きじゃなかった27歳女子がリングに上がったワケ (3ページ目)
程なくして、ロマンチストは思い知らされる。わずか数年では多少運動神経がいいくらいで、五輪への扉をこじ開けることはできない。
この時、ボクシングから退いたとしても、誰も後ろ指など指さなかったはず。それでも、彼女が選んだのは引退ではなくプロ転向だった。
「プロはアマと違って、ヘッドギアもないし、グローブも薄い。だから、恐怖はありました。でも、それ以上にボクシングを辞めることのほうがイヤで。
自分の今までの人生で、運動も、勉強も、仕事も、それなりにそつなくこなしてきたつもりではいたけど、何かで1番になったことがなくて。人生で、1度でいいから1番になってみたい。きっと、ここでボクシングを辞めたら、私は一生何かで1番になれないと思ったんです」
決断したというより、もはや後戻りできないほど、彼女はボクシングを愛し始めていた。
「やればやるほど、奥深さも、怖さも知って。やるほどにボクシングが好きになっちゃったんで。楽しくてしょうがないですもん。あの日、選んだのがボクシングでよかったって思います。きっと他の何かではダメだった」
(文中敬称略/つづく)◆女子ボクサー・藤原茜はなぜアラフォーになっても闘い続けるのか
藤原茜(ふじわら・あかね)
1987年7月18日生まれ。千葉県出身。日体大を卒業し、コンサルティング会社に就職するもすぐに退職。その後、スポーツトレーナーなどをして働くなか、27歳の時にボクシングと出会う。当初は東京五輪出場を目指してアマで活動していたが、すぐに現実を思い知らされ、五輪出場を諦めてプロに転向。アラフォーを迎えた現在も、第一線で活躍している。ワタナベボクシングジム所属。戦績9戦5勝(2KO)3敗1分。ワタナベボクシングジムHP>>
フォトギャラリーを見る
3 / 3