『やめろぉぉ!』天龍源一郎の「53歳」に柴田勝頼が白目 リングサイドのケンコバは叫んだ (2ページ目)

  • 松岡健治●取材・文 text by Matsuoka Kenji

――「53歳」とは、2003年に53歳を迎えた天龍さんが開発した新技ですね。ブレーンバスターの態勢から垂直落下で脳天をマットに突き刺す荒技ですが、天龍さんはこの技を引っ提げ、年齢を超越した闘いを繰り広げていました。

「今までプロレスの名シーンと呼ばれる攻防は、例えば『小橋建太vs佐々木健介』(2005年7月18日@東京ドーム)での"チョップ合戦"のように、打撃技や同じ系統の技を精魂尽き果てるまで打ち続ける試合が多かった。ただ、この『天龍vs柴田』は、柴田選手の必殺技『PK』と天龍さんの『53歳』という、系統が違いすぎる技を打ち合う試合になったんです」

――柴田選手の「PK」は、尻もちをついた相手の胸板に、自らが走り込んで強烈な蹴りを放つ必殺技ですね。

「打撃技のPKと、投げ技の53歳が交錯する攻防は、おそらく過去も今のプロレスでもあり得ない展開です。まず天龍さんが、53歳で柴田選手の頭をマットに打ちつける。ところが柴田選手は、天龍さんより先にムクッと立ち上がってロープに向かって走りだし、反動をつけてPKを叩き込む。

 それに対して、天龍さんは手で肩をはらって『効いてねぇよ』と言わんばかりに立ち上がり、53歳を見舞う。柴田選手は再び脳天をマットに突き刺されるんですが、またも天龍さんより先に立ち上がってPKを浴びせる......このすさまじい攻防をリングサイドで目の当たりにした俺は、我を忘れて『やめろぉぉ!』と叫んでいました」

【謎だった、天龍のえげつない攻撃】

――なぜ『やめろ』と叫んだんですか?

「PKと53歳の攻防の途中くらいから、柴田選手が白目をむいていることがリングサイドからハッキリと確認できたんです。天龍さんの53歳は、脳天をマットに突き刺すフィニッシュホールド。技の系統が違いすぎるあの攻防では、明らかに柴田選手のほうがダメージが深くなるんです。

 白目をむいた表情を見て、柴田選手が脳震盪を起こしていると思いました。その危険な状態で柴田選手は、PKで反撃するためにロープへと走る。脳震盪状態での全力疾走は、『鍛えに鍛えたプロレスラーでも無理や!』と危険を感じたんです。だから『やめろ』と叫ばずにはいられなかった。衝動が抑えられませんでしたね」

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