148cmの天才レスラーが世界一小さいプロレス会場で宙を舞う 駿河メイが語る入団1カ月での衝撃デビュー (4ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

【駿河メイを大きく変えた2人との出会い】

 入団当初、人見知りで大人しく、おどおどしていた。そんなメイを変えたのは、フリーのレスラー、希月あおいだった。

「あおいさんに出会って、見る景色が変わりました。上京してから初めて、心の底から笑えた。とにかく明るくて面白くて、生きるテーマパークみたいな人です。『こういう大人もいるんだ、こんなふうに自由に振る舞っていいんだ』と思いました」

 希月は試合中も普段のまま、気取らず、楽しそうにプロレスをする。希月に「もっと自由にしていいんだよ」と言われたことで、ファイトスタイルにも変化があった。リング上でも等身大の自分で動けるようになった。

 希月とタッグを組んだ時、赤い色のシュシュをもらった。それからメイのコスチュームにはシュシュが定番アイテムになった。希月が引退する時には、彼女が使っていた羽をもらった。それからメイは入場で羽を使うようになった。どちらも今のメイのトレードマーク。「駿河メイの半分は希月あおいでできている」と話すのも頷けるほど、大きな影響を受けた選手だ。

 もうひとり、メイを大きく変えた人物がいる。現在SEAdLINNNG代表取締役社長を務める、南月たいようだ。

 かつて、さくらえみが代表を務めていた「我闘姑娘(ガトークーニャン)」に在籍していた南月(当時は夏樹☆ヘッド)は、メイの姉弟子にあたる。メイは兼ねてから、さくらに「メイちゃんと南月は似ているところがある」と言われていたが、初めて南月に会った時にそれがわかった気がしたという。

「さくらさんの考えるプロレスを、南月さんが体現している部分があるのかなと思いました。南月さんが、自分の動きの可能性の幅を広げてくれました」

 南月もメイも、速く動き、高く飛び、高度なテクニックを持つ。いわゆる"ハイスピード"と言われる選手だ。南月はメイに、ハイスピードとは何かを教えた。人より速く動くことがハイスピードだと思われがちだが、それは少し違う。近道をしてプロレスをすると基礎が崩れるが、遠回りをしてでも基礎を固めて速く見せるのが真のハイスピード――。南月の話を聞いて、メイは靄(もや)が晴れた気がしたという。

自分では挑戦しなかったことを、「メイならこれできるんじゃない?」とどんどん提案してくれたのも南月だった。それまでセカンドロープから"メイジャンプ"をしていたが、南月に「トップ(ロープ)イケるでしょ」と言われ、やってみたら難なくできた。「じゃあ、これもできるのかも」という動きがどんどん増えていった。

 デビューから1年でタイトルマッチに挑戦し、海外遠征を重ね、気づけば他団体や海外からも引っ張りだこの超人気レスラーになっていた。そんな2020年冬、新型コロナウイルスが蔓延する――。

(後編:「お前、そんなこともやるのか!」対戦した鈴木みのるに嫉妬 他団体に移籍しない理由も明かした>>)

【プロフィール】
駿河メイ(するが・めい)


1999年5月30日、京都府生まれ。2018年4月に上京し、プロレスリング我闘雲舞の練習生となる。同年5月27日、北沢タウンホール大会にて、さくらえみ戦でデビュー。2020年12月31日、バリヤン・アッキとのタッグでさくらえみ&米山香織を破り、アジアドリームタッグ新王者に輝く。11度防衛。2023年10月16日、米山香織&新納刃を破り、再びアジアドリームタッグ王者になり、現在防衛中。148cm。X(旧Twitter)@Mei_gtmv2

【大会情報】

我闘雲舞新宿大会

■日時:2024年1月10日(水)開場18:30 開始19:00
■会場:新宿FACE

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