148cmの天才レスラーが世界一小さいプロレス会場で宙を舞う 駿河メイが語る入団1カ月での衝撃デビュー (3ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

【入団から1カ月でデビュー】

 高校を卒業し、3月から我闘雲舞が運営するプロレス教室「誰でも女子プロレス」(通称「ダレジョ」)に通うことになった。週一回、京都から夜行バスで上京した。

 他のプロレスラーにインタビューすると、「最初は前転、後転もできなかった」という話をよく聞くが、メイはマット運動を難なくクリアし、ドロップキックもすぐに打てたという。コーチを務めていたさくらえみは、当時のメイのことを「自分なりに課題を見つけるのがうまく、参加メンバーによって変わる練習内容の中でも、自分の時間を大切にすることができていた」と振り返る。

 4月、東京に引っ越し、我闘雲舞の練習生になった。朝から晩まで道場で過ごし、寮に帰った瞬間、猛烈な寂しさに襲われた。

「東京って、夜になっても外が明るいですよね。部屋に入った瞬間に暗くなるから、急に『独りぼっちだ』という感覚になって、泣きました。でも母を泣かせてまで東京に出てきたので、絶対に帰れないと思った。母は、本当に毎日泣いてましたから」

 4月30日、我闘雲舞市ヶ谷大会で開催された「ドロップキック選手権」に出場。観客の拍手の大きさで優勝を決めることになり、練習生ながら見事なドロップキックを披露して優勝した。優勝したことで、とんとん拍子にデビューが決定した。

 デビュー戦は5月27日、北沢タウンホール大会。対戦相手はさくらえみ。プロレスを始めてから2カ月、入団から1カ月という、異例のスピードデビューだ。映像を観ると、使っている技は今とあまり変わらない。デビュー戦とは到底思えぬキレのよさで、すでに「駿河メイ」というプロレスラーは完成されていたように思う。

 さくらは試合が終わった直後、さまざまな選手から「すごい選手がデビューしましたね」と言われたという。

 9月、バンコクで開催される我闘雲舞6周年記念大会に出場するため、さくらと共にタイへ向かった。

 生まれて初めて飛行機に乗り、「頼むから降ろしてくれ......」と思いながらも、無事に到着。初めての海外は楽しくてしかたがなかったという。

「その頃からさくらさんと過ごす時間も増えて、猫を被らなくなってきたというか、自分のペースで過ごせるようになってきたからか、いろんな心配を掛けましたね......」

 さくらと2人でネイルサロンに行き、メイが先に終わったため、外で待っていることになった。さくらが外に出ると、メイがいない。荷物はそのまま。お金も持っていない。携帯も繋がらず、「さらわれた!」と大騒ぎになった。

「ひとりでショッピングモールに行っちゃったんですよね。大会後に物販があったので、お金は少し持ってたんですよ。せっかくだからなにか買いたいなと思って。ちゃんと戻ってきましたよ」

 さくらはそんな自由奔放なメイについて、「眠い時にすぐ眠り、常になにか口に入れ、疲れた時に休みたいと言える人なので信用度が高い」と話す。

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