安納サオリがプロレスで闘い続ける理由 俳優を夢見た「やさぐれ時代」の悔しさ (2ページ目)

  • 大楽聡詞●取材・文 text by Dairaku Satoshi
  • 田中亘●撮影photo by Tanaka Wataru

【「プロレスをやれ。絶対スターになるわ」】

――そうして女優を目指していたところから、なぜプロレスラーに?

安納 ある日、友達と一緒に飲んでいた時に「知り合いを呼んでいい?」と言われて。それで現れたのは、胡散臭いおっさん、アクトレスガールズの代表でした(笑)。それでいきなり、関西弁で「おい、プロレスをやれ。絶対スターになるわ」と。それまでプロレスを観たこともなかった私にです。

――急なことで驚いたでしょうね。

安納 それでも、「1回プロレスを観に行こう」となって、一緒に後楽園ホールでスターダムの試合を観戦しました。初めてプロレスを観た時に、自分がリングに上がっている姿が想像できたんです。2014年の秋のことでしたね。

 アクトレスガールズの旗揚げが2015年5月に決まっていて、その練習もやらされました(笑)。休もうと思っても、代表から何度も電話がくるんですよ。それまでまともにスポーツをしたことがなく、運動神経もよくなかったので基礎トレーニングは苦手でした。とにかく、「汗をかくのが嫌、ぐちゃぐちゃになるのが嫌、疲れるのが嫌」と、嫌いなことが三拍子揃っていました(笑)。

――その3つは、プロレスをする上では避けて通れないですね。

安納 そのとおりなんですけど、本当に嫌でした。でも、どんどん仲間が入ってきて、顔見知りも増えてきているから、もうちょっと頑張ろうと。「他の子に負けたくない」という気持ちも芽生え、デビューが決まってリングにも上がりましたが......その試合後にプロレスは辞めようと思っていました。

――デビューまでの数カ月間、よく嫌いな練習を続けることができましたね。

安納 負けず嫌いの精神というか、諦めるのが嫌だったので。そこはプライドがありました。

――2015年5月31日に行なわれたデビュー戦のことは覚えていますか?

安納 めっちゃ覚えてますよ。技とか闘い方も含めて、自分の見せ方、立ち振る舞いなどすべてがダサかった。運動していなかったから筋肉がなくて、太っていたし。「こんな姿を、360度晒すのがプロレスなのか」と思いましたし、今でもあの試合の動画を見ると「自分は何をしとったんやろ」となりますね。

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