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マーベラス・桃野美桜が目指す、師匠の長与千種と「真逆」の存在。壮絶なケガを乗り越えての野望は「100歳までプロレスラー」 (3ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko
  • photo by 林ユバ

どう頑張っても、長与千種にはなれない

「プロレスラーがリングに出せるのは、感情」――桃野は繰り返しそう話す。

 桃野美桜の"感情"――。落ち込む時はだれよりも落ち込むが、嬉しい時はだれよりも嬉しい。喜怒哀楽が激しく、負けず嫌い。そういった感情すべてをリング上でそのまま表現している。スイッチを入れてキャラクターを作り上げる選手が多い中、ありのままの自分を出すのが桃野という選手だ。

「ひとりでも多くの人が、自分が出す感情に乗っかれるようなレスラーになりたいです。昔の映像とか見ていると、お客さんは立ち上がる勢いじゃないですか。今は後ろの人とか気にしちゃって、そういうのがない。お客さんが前のめりになるくらい、心を持っていきたいです」

 以前、彩羽匠はインタビューで「昔の熱狂を取り戻したい」と話していたが、桃野も同じ考えだ。しかし、彩羽とは少し異なる。長与の遊び心は誰よりも継承したいが、"長与イズム"を継承したいとは思っていない。

「もちろん教わっていることはたくさんあるし、それを受け継いでいきたいというのはあるんですけど、どう頑張っても長与さんにはなれない。無理なんですよ。ああいうカッコよさだったり。そこと同じところに行っても仕方ないし、長与さんみたいな人は匠さんひとりでいい。自分は、なんなら真逆になりたい。匠さんとか長与さんが行けないようなところに行きたいです」

 今年10月、アメリカのWest Coast Pro Wrestlingでクイーン・アミナタと対戦。海外進出にも意欲的だ。目標は、AEWでヒールレスラーとして活躍するナイラ・ローズと組み、かつてのユニット「マブダチ♡厨二病卍卍」を再結成すること。「ヒール怪獣のナイラと、『ヘーイ!』みたいな軽いノリでタッグを組みたい」と笑う。

 野望は「100歳までプロレスラー」だ。

「ヨボヨボの100歳じゃなくて、バリバリに元気な100歳で。自分は150歳まで生きるので、あとの50年間はなにもせず自由に生きます」

 これまで多くのプロレスラーにインタビューをしてきたが、桃野ほど純粋に「プロレスが大好き」という選手に会ったのは初めてだ。桃野は女優の木村多江ファンを公言しているが、木村多江を好きになった時、「プロレスに対して失礼じゃないか」と悩んだくらい、プロレスが好きで好きでたまらないという。

「プロレスが好きという気持ちでは、すべてのプロレスラーの中でだれにも負けないと思ってます。好きって最強ですよね」

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