身長149cmの桃野美桜は「全女」をきっかけにプロレスの道へ。「ピカーーーン!って、プロレスの神様が降りてきた」

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko
  • photo by 林ユバ

■『今こそ女子プロレス!』vol.9
桃野美桜 前編

(vol.8:仮面の女子プロレスラー、ハイパーミサヲが明かす壮絶な過去。大学時代に青山霊園から緊急搬送されるなど「どん底でした」>>)

「Joshi(女子)」――海外ではなにを指すか、わかるだろうか。正解は「日本の女子プロレス」。日本の女子プロレスが、近年、国内に留まらず海外でも爆発的な人気を誇っている。

 高度な技、華やかさ、女子ならではの感情のぶつかり合い......。女子レスラーの"ルックス"も魅力のひとつかもしれない。試合観戦のために日本を訪れる外国人も多く、確実に世界規模のムーブメントが起こりつつある。そしてその中心となっている団体が、スターダムだ。

「スターダムさん、本当にすごいです!」

 マーベラス所属の桃野美桜は、目をキラキラ輝かせながら、そう言った。その輝きに偽りはないのだろうと、女のわたしは直感した。そしてその裏には、言うに言われぬ悔しさと嫉妬が隠されていることも――。

女子プロレス団体・マーベラスに所属する桃野美桜女子プロレス団体・マーベラスに所属する桃野美桜この記事に関連する写真を見る この日、わたしは千葉県船橋市にあるマーベラス道場を訪れていた。腰の怪我による長期欠場から復帰して間もない桃野に、現在の心境を聞こうと思ったのだ。しかし彼女が素直になんでも話してくれるものだから、つい、「スターダムの独走状態」についてどう思うか尋ねた。

 スターダムの選手はみんな可愛くて、アイドルみたいにキラキラしてる。ブシロードという大きい会社の傘下なのに、選手ひとりひとりがSNSを頑張っていて尊敬する......。桃野の口から矢継ぎ早に、「スターダムのすごさ」が語られる。じゃあ、と、わたしは尋ねた。「マーベラスが、スターダムに勝っていると思うところは?」――。すると彼女は少し戸惑いながら、しかしはっきりと、こう答えた。

「プロレスです」

 その言葉の響きはあまりにも力強く、もの悲しく、真っ直ぐで、わたしは涙を堪えるのに必死だった。マーベラスは、負けていない。桃野美桜――あなたの輝きがある限り、世界中のどの団体にも負けてはいないと、心の中で叫んでいた。

 身長149cm。小さくて素早く、賢い。まさに『ジュラシック・パーク』で言うところのラプトル。わたしが心底、「天才」だと思うレスラーのうちのひとり、桃野美桜の物語を聞いてほしい。

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