ケンコバが切望する格闘技界の「歴史が覆りそう」な前田日明の音声解析と、格闘技界におけるリングスの再評価 (2ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by 平工幸雄/アフロ

――それはぜひ、実現してほしいです!

「ただ、インタビューの後半になると、少しは聞き取れるようになってくるんです。『10年分、キレたな。あぁちきしょう』とか。だんだん前田さんのトーンが下がってきて、記者にフライへのペナルティについて問われると、『いや、今回俺のほうが悪いから。帰って謝ります』と断言した。それで生中継は終わったんです」

――前田さんがこの試合でキレた理由については、フライが掌底を放った時に故意に目を狙ったというのが定説になっています。その説はどう捉えていますか?

「確かに、俺も記事を読んだりして、フライが前田さんの目に指を入れたことが定説になっていることは知ってます。ただ、試合をあらためて見た時には、フライの指が目に入ってるのを確認できなくて。さらに、試合後の控室で前田さんは『俺もやり返したけどね』と言っている。確かに先に指を立てたのはフライだったかもしれないけど、前田さんも故意に反則を犯しているんですよ。これは、いかがなものかと(笑)。

 当時のリングスは常にリング上がギスギスしていて、この試合以外にも不穏な雰囲気になる試合はありました。ただ、その"危ない空気"がリングスの魅力でしたし、俺は好きでしたね」

――リングスは、前田さんがオランダ、旧ソ連、南米などで格闘家を発掘し、プロの試合をさせた画期的な団体でした。

「俺は新生UWFから分裂したリングス、UWFインター、藤原組の3団体は贔屓なしに見ていました。でも、リングスは当初、日本人選手が前田さんと長井満也さんの2人しかいなかったので感情移入するのが一番難しかったですね。

 ただ、格闘技の歴史を振り返る際に、リングス抜きで語られているのを聞くと悲しいですね。今のRIZINの前身であるPRIDEはUWFから生まれ、立ち技のK-1は独自路線できたと言われることもあるんですけど、それは違う。両方の歴史からリングスが抜け落ちているんです。K-1も正道会館がリングスに参戦して、佐竹雅昭さんなどが名前を売ったから生まれたもの。今のキック人気があるのも、いわばリングス経由ですから、前田さんもそんな扱いをされるのは悔しいはずです」

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