ゴロフキンがカネロに完敗で再びミドル級へ。村田諒太が現役続行なら、時代の代わり目にどう関われるのか

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

両者に見えた衰え

 今戦が好勝負にならなかった最大の原因は、40歳になったゴロフキンの衰えに違いない。積極的に攻めれば、スピードで勝る8歳年下の相手にカウンターのチャンスを与えることになる。過去2度の対戦でも、ゴロフキンはカネロのクイックネスとカウンターのうまさによって攻めきれない印象があったが、明らかに反射神経が鈍った第3戦ではその傾向がより顕著になっていた。

「彼は右を使ってこなかった。私が私の仕事をこなしたからだ」

 カネロのそんな言葉通り、ガードが開いた隙に左ボディブローを打ち込まれるのを警戒してか、ゴロフキンは得意の右パンチをほとんど使わなかった。それでは、勝機があるはずもない。カネロの動きが落ちた終盤に、左フックを主体に反撃したものの、逆転の可能性を感じさせる瞬間は最後までなかった。

 一方、内容的には公式採点(2ポイント差がふたり、4ポイント差がひとり)以上のワンサイド勝利を収めたカネロも、"翼をもがれた鳥"状態のゴロフキンを仕留めにいくエネルギーはなかった。パンチはピーク時のキレと迫力を欠き、中盤以降はスタミナに問題があったことをカネロ本人が認めている。試合前は古傷の膝の状態がよくなく、ロードワークを週3程度しかこなせない状態だったという情報も入ってきている。

 カネロはライトヘビー級で戦った今年5月の前戦で、ドミトリー・ビボル(ロシア)に久々の負けを喫したばかり。今戦を含めたこの2試合を見る限り、ゴロフキンほどではないにしても、62戦のキャリアを積み上げてきたカネロも緩やかに下降線をたどっているようにも感じられた。

「今後、カネロは対戦相手の選択を注意深くしなければいけない。年齢(による衰え)を見せているのはGGG(ゴロフキンの愛称)だけではない」

 フィラデルフィアに本拠を置く実力派トレーナー、スティーブン・エドワーズのTwitterでのつぶやきは的確なように思える。

 ライバル対決シリーズの最終章となった今戦。やや消化不良の戦いを見て、カネロ、ゴロフキンが軸になって中量級に織り成した一時代の"終わりの始まり"を感じたのは筆者だけではなかっただろう。

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