「朱い」ベルトを巻いた朱里が抱く「今のプロレス=危険すぎる」批判への違和感。「簡単に言ってほしくない」 (3ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko
  • 林ユバ●撮影 photo by Hayashi Yuba

感情をコントロールできる人が強い

 近年、「いまのプロレスは技が危険になりすぎている」と批判するファンが増えている。しかし朱里は「選手としてはそれを簡単に言ってほしくない」と自伝に書いている。

「選手はひとつひとつの技を本当に大切にしています。日頃からたくさんの練習をしてリングに上がっているし、しっかり相手の力量を見て技を出しています。覚悟を持ってリングに上がっているので、考えなしに高度な技をやっているわけではない。いろんな思いがあって、リングで見せたい世界観を出しているんです。

 ケガと隣り合わせではあるし、それくらい危険なことをやっていますが、『こんな技を受けても立ち上がるプロレスラーはすごい!』という非現実を楽しんでもらいたい。わたしはいまスターダムで激しい試合をしているので、そのなかでしっかりと見せていきたいと思っています」

プロレスへの想いを語る朱里プロレスへの想いを語る朱里この記事に関連する写真を見る スターダムに入団した当初は、自分をどこまで出していいのか迷う部分もあったという。年長者として一歩引いたほうがいいのかなと考えたり、クールで強いイメージを出していったほうがいいのかなと考えたり。考えすぎて、頭痛に悩まされたという。

「"朱いベルト"を獲るためにスターダムに入団して、2回挑戦したけれど獲ることができなかった。どんなプロレスをしたらいいのか、自分を見失いそうになりました。でもやっぱり、母にベルトを巻いた姿を見せたい、応援し続けてくれている方の期待に応えたいという思いがあったから、乗り越えられました」

 昨年8月のインタビューで、わたしは朱里に「強さとはなんですか?」と聞きたかった。しかし亡き母への思いを語りながらワンワン泣く姿を見たら、聞くことができなかった。彼女もまた、本当の強さを追い求める旅の途中なのだと思ったのだ。

 しかしあれから半年が経ち、その間に朱里は"朱いベルト"を巻いた。半年前は切羽詰まっているように見えたが、今日の朱里はとても穏やかな表情をしている。今なら聞ける。強さとはなんだと思いますか?

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