ぱんちゃん璃奈がどん底だった7年間。「これを逃したら幸せになれない」とキックボクシングにしがみついた (4ページ目)

  • 篠崎貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro
  • 撮影●田中亘 photo by Tanaka Wataru

――そんな厳しい環境にもかかわらず、何度も行ったのはなぜ?

「練習に集中できるのが一番ですね。日本だと遊びの誘いもあるし、仕事も家事もしていたけど、タイでは朝と夜の二部練をしてマッサージをして、それで終わり。さすがに安いホステルに泊まるのはやめましたが、普通のホテルでもキックパンツで出入りしてたので、他の宿泊客はビックリしていました(笑)。

 タイでは少年が練習相手になってくれるんですけど、メッチャ強いんです。体重が40キロくらいの少年だったら勝てるのに、45キロくらいまで上がると勝てなくなる。中学生を相手に首相撲などをやって体が強くなりました」

タイへの武者修行などで実力を高め、プロデビュー後は12戦無敗タイへの武者修行などで実力を高め、プロデビュー後は12戦無敗この記事に関連する写真を見る――2017年に初めてアマチュアの試合に出た時、人を殴ることに抵抗はなかったですか?

「最初は『本気で殴れるのかな』という恐怖はありました。初めての試合は記憶がないんですよね。息が上がっちゃって、ただ手を出してるみたいな。でも、勝ってレフェリーに手を上げて貰えたことは嬉しかったです。アマチュア時代は1年間で12試合に出ましたから、毎月試合をしているような感覚でした」

――当時、描いていた将来のビジョンは?

「アマチュアで勝つのも必死だったので、上は見ていませんでしたけど、たくさん勝つとプロに上がれる、アマチュアのAリーグの選手たちがキラキラして見えて、すごく尊敬していました。初めての試合から1年も経たずにAリーグに出られるとは思いませんでしたね。そこで試合をした時は、『憧れていた人たちにやっと追いつけたな』と思いました」

――ここまでプロで12戦全勝。負けが怖くなることはありますか?

「毎回、怖いですよ。試合の2日前くらいまでは『負けたらどうしよう』と思っています。計量で相手の顔を見た瞬間に負ける気が1ミリもなくなって、会見でもビックマウス的なことを言うんですけど、ジムに帰ってくると『やっぱり相手のほうが強いんじゃないか』となる。でも、試合当日にはまた『絶対に私のほうが強い』と戻る。忙しいですね(笑)」

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