ジャンボ鶴田、三沢光晴ら伝説のレスラーたちの激闘。それらを裁いたレフェリーが3つの名勝負を厳選

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by Sankei Visual

「名誉レフェリー」が選んだ名勝負3試合

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 全日本プロレスの和田京平名誉レフェリーは、1974年のレフェリーデビューから47年間で1万を超える試合を裁いてきた。誰よりも間近にプロレスを目撃した男にとっての「最高の試合」とは、どの対戦なのか。自身がレフェリーを務めた試合の中から「忘れられない名勝負」3試合を選んだ。

数々の名勝負を繰り広げた川田利明(左)と三沢光晴数々の名勝負を繰り広げた川田利明(左)と三沢光晴この記事に関連する写真を見る***

① 1995年7月24日@日本武道館 三冠ヘビー級選手権試合
【王者・三沢光晴vs挑戦者・川田利明】

 真っ先に和田が挙げた「名勝負」は、三沢vs川田。同年の5月26日に、三沢は札幌中島体育センターでスタン・ハンセンを破って三冠王座の奪還に成功。その初防衛戦で挑戦したのが川田だった。両者の三冠戦での対戦は、この日で4度目だった。

「この時の三沢vs川田は、俺が裁いたなかでも最高の試合と言って過言じゃないです。2人は毎回、これ以上の試合はないというくらい、すごい試合をやっていた。そのなかでこの試合が忘れられないのは、ゴングが鳴って5分後くらいに、三沢が川田の浴びせ蹴りを顔面に食らって脳震盪を起こしたんです。それで、俺が声をかけても『わからない。わからない』と三沢が慌てていたんですよ。

 あんな三沢は見たことがなくて、俺も焦ったし、恐らく対戦相手の川田もそうだったと思う。普通なら試合を続けるのは難しいんだけど、三冠戦だし、俺も止めるわけにはいかなかった。だけど、三沢はそこから約20分も闘ったんです。『プロレスラーってスゲェな。大したもんだな』って感動したね」

 試合は、三沢がエルボーからの片エビ固めで川田を破った(24分16秒)が、リングを下りたあとの控室で見た光景が忘れられないという。

「三沢が控室でリングシューズを脱いだのに、また履いたんです。それを見て『三沢、どうした?』と声をかけると、『これから試合だから』と言うんです。それで俺は『もう終わったから大丈夫』って声をかけてね。三沢は、自分が何をやったのか覚えてないんです。あの姿は忘れられないし、あらためて三沢のすごさを思い知らされたよ」

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