「なんで自分はこうなんだ!」悩み続けたアイドル時代。伊藤麻希はプロレスに生きる道を見つけた (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

 小学校4年生までは「自分は好かれている」と思っていたが、高学年になると雲行きが怪しくなった。しかし、注目を浴びているのも特別な存在だからだと自惚れていた。「いじめられることで、自己肯定感を高めていた」と話す。

インタビュー直前の試合で顔面にケガをし、サングラス姿で取材に応じた伊藤 Photo by Hayashi Yubaインタビュー直前の試合で顔面にケガをし、サングラス姿で取材に応じた伊藤 Photo by Hayashi Yubaこの記事に関連する写真を見る 有名になりたかった。有名になって、金持ちになって、いじめてくる奴らを見返してやりたい。絵を描くことが好きで、漫画家になろうと思った。学校の休み時間中も、ひたすら絵を描いたり物語を作ったりした。その時間だけは、非日常の自分でいられた。

 中学校に上がると、好きな男の子ができた。面と向かって話すのが恥ずかしくて、ずっとその人の絵を描いて過ごした。少しでも一緒にいたくて、同じ塾に通った。ある日、そんな彼がAKB48の柏木由紀ファンだと知る。「柏木由紀と結婚する」と話しているのを聞いて、自分もアイドルになって彼と結婚しようと思った。

 高校在学中、アイドルのオーディションを受け始め、2011年7月に「LinQ」2期生としてグループに加入する。しかし人気は出ず、ライブにも出られない。引きこもりがちになり、朝起きられなくなってしまった。学校の単位もとれず、高校を中退した。

「同期の子が人気になって、ソロパートとかを持つようになるなか、自分はなんにもなくて......。それで自分のことが好きになれないというか、ずっと自分を責めている感じでした。『なんで自分はこうなんだ!』って。それで頑張れたらよかったんですけど、落ち込むだけ。そりゃあ、うつ病になるわっていう感じです」

 そんな時に出会ったのがプロレスだった。2013年8月13日、DDT両国国技館大会にゲスト参戦し、高木三四郎社長にヘッドバッドをして話題になった。プロレスがどういうものかはよくわからない。しかし、自分にはプロレスで人を動かす力があるということだけはわかった。プロレスラーに向いているんだろうなと思った。

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