カバンの中にゴキブリも。カリスマ女子レスラー・ジュリアが明かした壮絶ないじめに遭った過去
■『最強レスラー数珠つなぎ』女子レスラー編
「美しき狂気」ジュリア 前編
女子プロレス団体「スターダム」で圧倒的な人気を誇るジュリア photo by Hayashi Yubaこの記事に関連する写真を見る「ジュリア、勝つよね? 丸坊主にならないよね?」
「大丈夫だよ! 私たちのジュリアだもん!」
私たちのジュリア――。日本武道館の女子トイレで聞こえてきたその言葉に驚き、思わず振り返ると、10代と思しき3人の女性たちが鏡に向かってメイクを直していた。デートに出掛けるような服装で、念入りにメイクを直す彼女たちは、まさにジュリア本人がよく言うところの「ジュリアのことが好きで好きでたまらない諸君」なのだろう。
女子プロレスファンの9割が男性といわれている状況が、少しずつ変わろうとしている。これからもっともっと、女子プロレスは女性に支持されていくに違いない。
この日、「3.3スターダム日本武道館大会」で行なわれた敗者髪切りマッチで、中野たむに敗れ、バリカンで髪を刈られるジュリアを見た私はそう確信した。女の象徴である髪の毛を失ったことで、彼女は「女であること」から解き放たれたように思えた。それはつまり、観る側にとって、女の生きづらさからの解放であり、性別を超越した自由の獲得に他ならなかった。
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1994年2月21日、ジュリアはロンドンで生まれた。父はイタリア人で、母は日本人。父はイタリアから、母は日本からロンドンに留学し、留学先で出会って結婚。長女として生まれたのがジュリアだ。1歳の時に日本に移住したため、ロンドンでの記憶はほとんどない。
彼女の経歴を調べるにつれ、不思議に思ったことがある。女子プロレス界全体でもカリスマ的人気を誇る選手でありながら、幼少期の話がほとんど世に出ていないのだ。「ハーフで元キャバ嬢」という奇抜な情報だけが一人歩きしているように思えた。幼少期の話をどうしても聞きたい――。私の関心はその一点にフォーカスされていった。
「ハーフはいじめられるってよく言いますけど、まさに私もその経験があって。小学校に上がってから中学卒業まで9年間、いじめに遭っていました」
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