「全員に好かれるのはあきらめた」。コンプレックスを武器にグラレスラー白川未奈の決意 (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

 前述の女性編集者との連載の中で、同性の性的な部分に対して非難する気持ちを「心のPTA」と表現している。Hカップをブルンブルンさせて入場する白川を初めて見た時、私たちの心のPTAが発動した。「あら、はしたない!」「まあ、みだら!」――。しかし、ピンと伸びた指先、意志の強い眼差し、好戦的な笑み......全身から生き様が伝わってくる闘いぶりを見て、PTAは黙りこくってしまった。

 この取材の前日、「3.3スターダム日本武道館大会」での活躍もすごかった。昨年末、鼻骨骨折で欠場してから、およそ2カ月振りの復帰戦。ランブル戦で大勢のレスラーがひしめき合う中、彼女の輝きは異彩を放っていた。

「今日起きたら首が回らなかったんですよ。寝返りが打てない感覚が久しぶりで、それがめちゃくちゃ気持ちよくて。『プロレスしてる!』っていう感じがして、今はとにかくすごく幸せな気分です」

ユニット「コズミック・エンジェルズ」で活動(写真:「スターダム」提供)ユニット「コズミック・エンジェルズ」で活動(写真:「スターダム」提供) 白川は客席のファンの顔をよく見るという。現在、プロレス会場ではコロナ対策で声援を禁じられているが、声は出せずともファンたちの「お帰り!」という顔を見て、嬉しかったと話す。

「ランブル戦であれだけの人数がいると、(レスラーは)空気みたいになってしまいがち。だけど、それだけはイヤだったんです。昨日はスターダム10周年の歴史を伝える興行だったので、まだまだ新参者の私は大きな口を叩けないんですけど、レスラーとしてはやっぱりランブルにぎゅっと詰め込まれるよりも、シングルマッチをしたいし、タイトルマッチをしたかった」

 復帰戦が決まった時、「ランブルで」と言われた時は悔しかったという。少しでも長くリング上で時間を過ごしたかった。しかし決められた中で最大限の自分を出さなければいけない。絶対に残ってやる、優勝してやる、という気持ちで臨んだ。

「でもね、ゆずぽんさん(愛川ゆず季)がまさか8年振りの復帰でタイガー・スープレックスを出してくるなんて思っていなかったので、正直びっくりしちゃった。びっくりしているうちに負けてしまいました......」

2 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る