アントニオ猪木が選ぶベストバウト。馬場戦も意識した世界王者との死闘 (2ページ目)

  • 松岡健治●取材・文 text by Matsuoka Kenji

◆闘う美女アスリート6人

弟のテリー(左)との「ザ・ファンクス」としても活躍したドリー(右) photo by Sankei Visual弟のテリー(左)との「ザ・ファンクス」としても活躍したドリー(右) photo by Sankei Visual この猪木との対戦のために初来日。26歳の猪木にとっては初の世界最高峰な選手への挑戦だったが、日本のプロレス界の中でズバ抜けたグラウンドレスリング技術があった猪木は、正統的なレスリングで対抗した。フルタイムとなった60分間で、ほとんどロープワークがないレスリングだけでの試合で観客を魅了。自らのスタイルとレスリング技術への自信を深めた、まさに"節目の一戦"だった。

 ドリー戦の記憶を、猪木は著書『猪木力』で「(ドリーの)スマートでシャープなレスリングは相当手ごわかった。あと、今みたいに照明がよくないから、冬なのにリングが鉄板を焼いたみたいに熱くて大変だった」と明かしている。"真冬の灼熱リング"で、マラソンのような60分間の死闘を戦い抜いたことへの誇りがうかがえた。

 さらに、その試合を「大きなステップ」とも語った。世界にその名を轟かせたという意味では、アリ戦が重要な分岐点となったことに異論はいない。しかしその試合はあくまでも「異種格闘技戦」で、純粋なプロレスでの試合で、レスラーとしての自信を掴んだのはこのドリー戦なのだ。

 当時、この一戦はプロレスファン以外の国民からも多くの注目を集め、試合を放送したNET(現テレビ朝日)は、その年の大晦日にNHK紅白歌合戦の裏番組で録画放送したほどだった。試合の実況を担当した、元テレビ朝日の舟橋慶一アナウンサーも次のように絶賛する。

「まさに、猪木さんが新しい時代のプロレスを見せた試合。60分間、まったく休む場面がない試合で証明したスタミナ、世界王者のドリーと互角以上の技術で渡り合った内容は、今までのプロレス界にはなかったハイレベルな攻防でした。私の中でも、ドリー戦が猪木さんのベストマッチです」

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