「東京で金メダルが獲れる」文田健一郎。先輩の銀獲得が嬉しくも悔しかった (5ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by AFLO


 文田は太田という"物差し"で世界との距離を測り、確信を得た。

 リオの興奮さめやらぬ2016年12月、全日本選手権。地球の裏側で「覚醒」を迎えた文田は決勝の舞台へと駒を進めた。マットの上で迎えるのは、太田だった。

 文田は勇気を持って攻め続けた。そして、「自分にはこれしかなかった」と言う得意の反り投げを極め、悲願の初優勝を飾ったのだ。

 そして2017年8月、世界選手権に出場した文田は、初出場にして優勝を遂げる。日本レスリング・グレコローマンスタイルの金メダル獲得は、世界選手権では1983年以来、オリンピックでは1984年ロサンゼルス大会以来の快挙だった。

 ただ、文田と太田のライバル関係は、まだ終わっていなかった。いや、むしろさらに燃え上がった。文田がオリンピックでの太田の奮闘ぶりを見て悔しいと思えば、太田もまた文田の世界選手権での躍進に唇をかみ、ふたりは切磋琢磨した。

 2017年の全日本選手権では、太田が世界チャンピオンになったばかりの文田にリベンジ。2018年の世界選手権は9位に終わったものの、太田はアジア選手権とアジア競技大会で優勝を果たし、存在感をアピールした。

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