46歳・永田克彦が今もマットに上がる理由「レスリングに現役も引退もない」 (3ページ目)
だが今回、永田にとってまったく不安がないわけではない。それが昨年1月に復活した当日計量のルールだ。32年ぶりのルール変更だから、永田自身、このルールで戦ったことがない。シドニー五輪も、4年前の全日本選手権も前日計量だった。
「この前の全国社会人オープン選手権で初めて体験したのですが、感覚がまったく違いました」
前日計量だった時、永田は元の体重に戻すのを得意としていた。多くの選手が試合当日に3~4キロしか戻せないところ、永田は8キロほど戻して、試合に臨んでいた。当然、それは大きなアドバンテージとなった。
「圧力をしっかりかけられるし、相手のパワーも吸収できるし、余裕を持って戦える感覚があったんです。だけど、今回の変更でほとんど相手と体重差がないなかで戦うことになる。やっぱり感覚は違いましたよね。今ひとつ圧力をかけにくかったり、相手に思わぬ技を食らったりもしました」
現在、永田は日本ウェルネススポーツ大学のレスリング部の監督もしているが、指導するにあたっても、自らの経験は大きな財産となる。当日計量で試合をするのは、今回の全日本選手権で2度目だが、出場者のレベルが高く、より質の高い知識が得られるはずだ。自ら体験したことを指導にもつなげる。これも、永田だからこそできることである。
インタビュー中、永田は「挑戦」という言葉を何度も口にした。
「なんというか、同世代の一般の方々にも『今からでもいろんなチャレンジができるんだよ』ということを伝えたい。そんな気持ちもあるんですよね。それは、今からプロ野球選手を目指すとか、オリンピックを目指すとかではなくて、今の自分よりワンランク上にいくことだったり、あるいは10年後に今の自分と同じ体力を維持することだったり、いろいろな挑戦ができると思うんです。そういう意味の挑戦をしてほしい」
永田は2005年にMMA(総合格闘技)に転向し、青木真也、秋山成勲、宇野薫、勝村周一朗といった国内のトップファイターと対戦。常に自身の可能性を探り、挑戦を続けてきた。
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