新旧世界王者も賛同。日本ボクシング界が「検察はタオルを投げろ!」

  • 小石勝朗●取材・文 text by Koishi Katsurou 撮影●山口裕朗 photo by Hiroaki Yamaguchi

「検察はタオルを投げろ!」

 刺激的なタイトルのインターネット署名キャンペーンを4月から始めたのは、日本プロボクシング協会(JPBA)だ。「無実の死刑囚」と呼ばれる元プロボクサー袴田巖さん(82)に対する支援活動の一環である。

 1966年に静岡県で起きた一家4人殺害事件(袴田事件)で死刑が確定していた袴田さんに、静岡地裁が再審(裁判のやり直し)の開始を認めたのは2014年3月だった。しかし、検察が決定を不服として即時抗告したため審理は東京高裁で続き、近く判断が示される。

今年1月、雪の中を東京高裁へ向かう袴田巖さんの支援者たち。先頭には輪島功一氏の姿もあった今年1月、雪の中を東京高裁へ向かう袴田巖さんの支援者たち。先頭には輪島功一氏の姿もあった 袴田さんの弁護団は「高裁でも再審開始が認められるのは確実」と楽観的だが、問題は、その場合に検察が最高裁へ不服申し立て(特別抗告)をする可能性が高いこと。高齢にもかかわらず審理はさらに長期化し、再審開始~無罪判決による袴田さんの名誉回復はいつまでも実現しないままになりかねない。拘置所から釈放されているとはいえ身分はいまだ「確定死刑囚」で、選挙権もないのだ。

 そこでボクシング協会の袴田巖支援委員会は、東京高裁で再審開始が認められれば検察はその決定に従うよう、世論へのアピールに乗り出した。インターネットに専用サイトを設け、誰でも賛同の署名ができる。高裁の決定が出た段階で上川陽子法相に提出し、特別抗告の断念を検事総長に指揮するよう求めるという。1カ月で署名は約1700人に達した。

 支援委の委員長を務める新田渉世(しょうせい)・協会事務局長(元東洋太平洋チャンピオン)は「裁判所の判断がいつ示されるか見通しのつかない中で、広く長く続けられるアクションを模索しました。ボクシングの試合放棄になぞらえたキャンペーンのタイトルに、私たちの決意を見取ってほしい」と話す。

 キャンペーンにあたって、元世界チャンピオンの長谷川穂積はこんなコメントを寄せた。

「冤罪がなくなり、ひとりでも多くの方が報われることを願っています。正しい者は最後に勝つと信じています」

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