2018.03.14

山中×ネリ戦の教訓。ふざけた体重超過
ボクサーを、どう懲らしめるか

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 3月1日に両国国技館で行なわれたルイス・ネリ(メキシコ)と山中慎介(帝拳)のWBC世界バンタム級タイトルマッチは、関わった多くの人たちが苦しい思いを味わう結果になった。

 前日計量で王者のネリが規定体重を大幅にオーバーしながら、試合は強行。世界タイトルこそ剥奪されたものの、減量苦の少ないネリは2ラウンドで山中をあっさりとKOしてしまう。

試合後、ネリが山中の左手を掲げるも、会場は険悪な空気に リング上で大喜びするネリを見て、日本のファンは「そもそも体重を落とす気がなかったのでは?」と憤慨したことだろう。前回2人が対戦した昨年8月の試合後には禁止薬物使用が発覚していた経緯もあり、ネリは日本リング史に残るダーティファイターとして記憶されることになった。

「引退試合」と心に決めて臨んだ一戦が”アンフェアな舞台”となってしまった山中は気の毒でならないが、似たようなケースはアメリカでも珍しくない。

 最も記憶に残っているのは、2012年7月に行なわれたエイドリアン・ブローナー(アメリカ)vsビセンテ・エスコベド(アメリカ)だ。ブローナーはスーパーフェザー級リミットを3.5ポンド(約1.6kg)上回ってWBO同級タイトルを剥奪されたが、エスコベドにボーナスを払うことでファイトは強行された。

 瑞々(みずみす)しい身体で現れたブローナーは、当然のように5回TKOで圧勝。エスコベドは「生まれたばかりの子供のために、この試合をキャンセルするわけにはいかなかった」と涙にくれ、後味の悪さだけが残った。

 世界タイトルの価値が下がり続ける昨今、確信犯的にオーバーウェイトの身体でファイトに臨む選手をしばしば目にする。たとえ王座獲得のチャンスを失い、罰金を科されても、テレビ中継される試合で元気な姿を見せれば将来のビッグマネーに繋がる。無理に体重を落としてタイトル戦にこだわるより、そのほうが「長い目で見ればベター」という判断なのだろう。