元いじめられっ子のボクシング
世界統一王者・田口良一とは何者なのか

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • 写真●山口裕朗 photo by Yamaguchi Hiroaki

【田口良一が語るV10と井上尚弥 前編】

 現WBA・IBF世界ライトフライ級スーパー王者に君臨する田口良一(31歳/ワタナベボクシングジム)。アマチュア時代に輝かしい実績を残したわけではなく、プロ転向後に力をつけた"叩き上げ"のボクサーとしても知られ、同じような境遇にある選手たちの希望になっている。

 2013年の井上尚弥との激戦で名を広めた田口だが、幼い頃は「いじめられっ子だった」という。そこからいかにしてボクシングと出会い、世界の頂点へと上り詰めたのか。昨年12月31日に行なわれた、IBF世界ライトフライ級王者(当時)ミラン・メリンド(フィリピン)との王座統一戦を振り返りながら、自身のボクシングスタイルの原点について語ってもらった。

王座統一戦を3-0の判定で勝利した田口良一王座統一戦を3-0の判定で勝利した田口良一――昨年の大晦日に行なわれたIBF王者メリンドとの統一戦は、初回に被弾するシーンもありましたが、2ラウンド以降は互角以上に戦って終盤に突き放すという内容でしたね。

「メリンド戦はKOで勝ちたかったですね。試合後に石原(雄太)トレーナーにも言われましたが、もう2ラウンド早くスパートをかけるスタミナがあれば、KOできていたかもしれません。疲れましたけど、(ラウンドごとの)インターバルに回復はしていたので、なんとかできたんじゃないかと。そこは反省点というよりも課題ですね」

――事前のファイトプランとは違う展開でしたか?

「相手は前半にすごく強いので、最初の4ラウンドは五分でいって、中盤から突き放そうという考えでした。ただ、中盤のラウンドも完全に突き放せず、どちらがポイントで上回ったかわからないラウンドが続きました。9ラウンド後、石原トレーナーから『どっちが勝っているかはわからない。だから、あと3回は絶対に取れ』と言われたんです。おかげで、最後の3つのラウンドで突き放すことができた。結果としては、うまく作戦がハマったんじゃないかなと思います」

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