太田忍、16年ぶりの銀。地獄を見た日本グレコローマンに新星誕生 (3ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by JMPA

 そして迎えた準決勝。相手は北京とロンドンでともに銀メダル(55キロ級)に輝き、昨年の世界選手権でも2位になったアゼルバイジャンのロフシャン・バイラモフ。第1ピリオド、相手の反り投げで2点を奪われるも、その直後に"太田スペシャル"とも言える強烈ながぶり返しを極める。そしてそのまま相手のマットを肩につけ、2分31秒フォール勝ちで決勝戦へと駒を進めた。

 金メダルをかけて戦う相手は、昨年の世界チャンピオンであり、現在世界ランキング1位のイスマエル・ボレロ・モリーナ(キューバ)。さすがに優勝候補筆頭の壁は高く、太田は5分7秒フォール負けを喫した。しかしながら、男子レスリング初日に登場した"切り込み隊長"の銀メダル獲得は、今後の日本レスリングのメダルラッシュの引き金となることは間違いないだろう。

 経験豊富な世界の強豪たちは、なぜ22歳の若者に苦しめられたのか――。それは、身体の柔らかさを生かした、太田のアクロバティックな動作にある。

 鋭い胴タックルを決めてきたと思いきや、十分に組み合った状態からでも豪快な反り投げや、がぶり返しを放ってくる。自分が太田を投げたはずなのに、なぜか逆に太田のほうが身体の上に乗っている。対戦相手からすればまったく予想ができず、レスリングの常識では考えられないトリッキーな動きを見せることから、海外で太田につけられたあだ名は「忍者レスラー」。リオ五輪では、太田ならではの能力が最大限に発揮されたというわけだ。

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