太田忍、16年ぶりの銀。地獄を見た日本グレコローマンに新星誕生 (4ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by JMPA

 太田が所属するALSOKの大橋正教監督は、22歳の銀メダリストの戦いぶりを次のように評価した。

「今日は、太田のよさがすべて出ました。オリンピックという大舞台で、何かやってくれそうな予感はありましたが、まさかここまでとは......。昨晩の組み合わせ抽選で強豪ぞろいのブロックとなり、実績ではるかに上回る選手たちを次から次へと相手にしなければなりませんでしたから。

 1試合も気が抜けませんでしたが、それでも淡々と、そして堂々と戦いながら自分の戦い方を貫き、波に乗っていった。相手にしてみれば、強さはそれほど感じなかったかもしれませんが、やりにくい選手だったでしょうね。まさに、"曲者(くせもの)"です。

 決勝戦では力の差を見せつけられましたが、あの試合でまた多くのことを学んだと思います。続く同僚(ALSOK)の伊調馨(いちょう・かおり)選手、高谷惣亮(たかたに・そうすけ)選手にもいい刺激になったことでしょう」

 表彰式後、「決勝の舞台に立てたことは幸せ。銀メダルは重たいですけど、金メダルを獲れずに終わったことは残念です」と素直に語り、4年後の東京五輪で金メダルを目指す。ロンドン五輪後に世代交代が図られ、エース不在となった日本のグレコローマンスタイルに、この4年間待ち望んだ新星が今日、誕生した――。

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