【プロレス】「男と男の約束をしてくれ」。
元番記者が語る長州力の素顔
ノンフィクション『真説・長州力 1951-2015』(田崎健太著)が刊行され、稀代のプロレスラーの半生が今再び注目を集めている。「革命戦士」と呼ばれた時代の寵児の素顔をもっともよく知る男――元『週刊ゴング』編集長・金沢克彦氏に、長州力の逸話を聞いた。
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私はファンの頃から長州力が好きだった。リングネームは本名の吉田光雄、頭はパンチパーマで、レスラーとしてパッとしない時代。この人はすごく強いはずなのに、なぜ陽の目を見ないのかと子供心に思っていた。
長州力の名が発表されたのは、おそらくテレビの生中継だった。画面上に「長州力」の文字がバーンと出た瞬間に「え~!」と。なぜなら当時は、ジャンボ鶴田、ロッキー羽田とか横文字全盛。それなのに長州力はないだろうと。
1983年4月3日、ライバルの藤波辰巳に初勝利した長州力。選手としての絶頂期だ さらに、長州がマイクを持って挨拶を始めた途端、タイガー・ジェット・シンが客席に現れ、暴れ始めた。会場の視線はシンに注がれ、誰も長州の言葉を聞いていない。私は子供心に「これはないだろ!」と憤りを感じた。だから1982年10月、長州が藤波辰巳(現・辰爾)に「俺はお前の噛ませ犬じゃないぞ!」と叫びブレイクしたときは嬉しかったね。
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