燃える闘魂の用心棒・藤原喜明が語る、「猪木vsアリ戦」秘話 (2ページ目)

  • 長谷川博一●取材・文 text by Hasegawa Hirokazu
  • 平工幸雄●写真 photo by Hiraku Yukio

――アリも、組長の殺気を察知したんでしょうね。もしもそこで手を出してきたら相手がアリといえども反撃しましたか?

藤原 当たり前じゃない! いざとなったら金玉にでも噛みつきますよ!

――アリ側は当初、この試合をもっと気楽に考えていたという説もあります。

藤原 向こうはエキシビションマッチのつもりで来てたのかもね。アメリカでプロレスと言ったらWWWF(現・WWE)とか(ショー的要素の強いプロレス)だからさ。

――しかし、猪木側は最初から真剣勝負をやるつもりでした。試合前日の計量で、アリがパフォーマンスで猪木さんと腕を組み合おうとしたら、猪木さんはマジな顔で払った。アリは「少しは本当に闘ってるように振る舞えよ、俺もふざけてやってるんだ!」と本音を吐いていました。このように、前哨戦ではむしろアリのほうがレスラーのようなパフォーマンスを見せていましたが、いざ試合のゴングがなると、紛れもない真剣勝負になりました。

藤原 当たり前の話だよ。こっちはアリのファイトマネーに18億円も用意してさ。しかも、新日本プロレスの財産じゃない、借金ですよ!(笑)。猪木さんが負けたら会社は潰れるし、猪木さん個人もすべてを失うでしょう。アリだってボクシング界を背負っているから負けるわけにはいかないだろうけどね。

――そして6月26日、運命のゴングが鳴ります。1ラウンドから終始、猪木さんはスライディングキックを連発していました。あの戦法は一緒に考えたんですか?

藤原 いや違うよ。試合数日前に公開練習があったでしょ? そこで猪木さんの関節技やハイキックを見たアリ側が、ルール変更を申し出てそれらの攻撃を禁止しちゃったんですよ。その結果としてのスライディングキックだったんじゃないかな。この攻撃は理に適ってるよね。体を後ろに反らすようにして蹴るでしょ。猪木さんの顔にアリのパンチが当たったとしてもカウンターのパンチにはならないからね。力学的に考えて当たり前のことだよ。

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